カウスワンプ(英語表記)Kow Swamp

改訂新版 世界大百科事典 「カウスワンプ」の意味・わかりやすい解説

カウ・スワンプ
Kow Swamp

オーストラリア東南部,マレー川流域にある沼地名称であるが,1967-72年にその地域でオーストラリア先住民の祖先人骨が発見され,遺跡群の名称にもなっている。見つかった人骨の放射性炭素法による推定年代は1万4000~9300年前。ここで発見された頭骨は,マンゴ湖出土の頭骨に比べると頑丈であり,オーストラリア先住民の祖先が2系統あるとの主張根拠となったが,現在では同一集団内の変異と見なされている。カウ・スワンプなどの頑丈な頭骨は,眼窩上隆起がとくに発達し,前頭部が平坦なことから,かつて,ジャワ原人との類縁性が指摘され,オーストラリア先住民はジャワ原人から進化したという,多地域進化説の根拠とされた。しかし,カウ・スワンプ頭骨における前頭部の平坦さは人工的な変形であることがわかり,また,ジャワ原人化石の発見と研究が進むと,ジャワ原人は独自の特殊化を遂げてから絶滅したと考えられるようになったので,ジャワ原人との類縁性は否定されている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android