新人,ホモ・サピエンスの起源に関する三つの仮説のうちの一つで(もう二つは出アフリカ説と同化混血モデル),原人が100万年以上前にアフリカからユーラシに拡散し,各地で進化してホモ・サピエンスになったという旧来の説。すなわち,ヨーロッパではネアンデルタール人がクロマニョン人へ,中国では北京原人が山頂洞人や港川人などの新人へ,東南アジアではジャワ原人がオーストラリア先住民へ進化したと考える。多地域進化モデルあるいは並行燭台モデルともいわれる。最近ではほとんど支持されない。
多地域進化説の根拠となったのは,ヨーロッパ・中国・東南アジアにおける化石の形態特徴がそれぞれの地域ごとに違っていて,それらの特徴が原人から新人まで,それぞれの地域で連続して受け継がれたということだった。たとえば,ヨーロッパではネアンデルタール人の大きな鼻と引っ込んだ頬骨がクヨマニョン人に,そして現代ヨーロッパ人に受け継がれ,中国では北京原人の大きなショベル型切歯とダーリー人の平坦な顔が現代中国人に受け継がれ,東南アジアではジャワ原人の大きな眼窩上隆起と平らで傾いた額がオーストラリア先住民に受け継がれたという。しかし,慎重に研究してみると,それぞれの地域の原人と新人の特徴の類似性は,故意に似ているものだけを選んだにすぎず,表面的なものであることが判明した。たとえば,中国における地域的な特徴といわれたショベル型切歯はネアンデルタール人にも見られることがわかった。また,オーストラリア先住民の化石に見られる平らで傾斜した額は人工的な変形であることがわかった。
→出アフリカ説 →ショベル型切歯
執筆者:馬場 悠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
(馬場悠男 国立科学博物館人類研究部長 / 2007年)
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