眼窩上隆起(読み)がんかじょうりゅうき(その他表記)supraorbital torus

改訂新版 世界大百科事典 「眼窩上隆起」の意味・わかりやすい解説

眼窩上隆起 (がんかじょうりゅうき)
supraorbital torus
braw ridge

眼窩上方の骨の隆起。形態学的には,正中部の眉間隆起,眼窩上縁に沿う眉弓(びきゆう),眼窩上縁外側部の眼窩上三角が合体して連続する隆起を形成する場合に眼窩上隆起と呼ぶ。強い咬合圧力に対向する補強構造,あるいは打撃に対する眼球の保護構造と見なされるが,眼窩上隆起の内側部には前頭洞という腔所があるので,単純な補強構造・保護構造とはいえない。性選択による男性特徴ともいわれる。類人猿,猿人,原人,旧人で発達するが,新人では退化的である。眉隆起(びりゆうき)ともいう。眉弓との混同がある。一般に流布している眉上隆起(びじようりゆうき)は誤り。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「眼窩上隆起」の意味・わかりやすい解説

眼窩上隆起
がんかじょうりゅうき
supraorbital torus

ヒトサル前頭骨下端が眼窩直上で前方に突出し,その付近が高まりとなっているもの。オーストラリア先住民を除いては発達程度は弱い。ネアンデルタール人などの旧人類,原人類,アウストラロピテクス類ではこれが強く発達しており,隆起が眼窩の上だけでなく前頭骨下端全体に広がってひさしのように突き出している。ゴリラなどの類人猿でもよく発達しているため,この隆起はサル的な原始的特徴の名残りであるといわれる。成因は,顔面骨を伝わってくる強力な咬合圧を前頭骨下端で受けるための適応であると考えられている。

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百科事典マイペディア 「眼窩上隆起」の意味・わかりやすい解説

眼窩上隆起【がんかじょうりゅうき】

眉上(びじょう)隆起,眉上弓(きゅう)とも。眼窩の上方にある前頭骨の一部が形成する水平方向の隆起。原始人類や類人猿ではこれがよく発達するのが特徴。強力な咀嚼(そしゃく)器官の圧力を吸収するために発達したと考えられる。

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