カブトウオ(読み)かぶとうお(その他表記)cockscomb bigscale fish

日本大百科全書(ニッポニカ) 「カブトウオ」の意味・わかりやすい解説

カブトウオ
かぶとうお / 兜魚
冑魚
cockscomb bigscale fish
[学] Poromitra cristiceps

硬骨魚綱キンメダイ目カブトウオ科に属する海水魚。オホーツク海南部、東北地方の太平洋沖、小笠原諸島(おがさわらしょとう)水域、南シナ海、太平洋の北半球の温帯・亜熱帯海域に広く分布する。頭はやや大きく、体長の3分の1程度で、表面は棘(とげ)や凸凹した骨質突起で覆われている。これが兜をかぶっているように見え、和名の由来となっている。両鼻孔の間に1本の上向きの棘がある。頭頂に1対の高いとさか状の隆起がある。前鰓蓋骨(ぜんさいがいこつ)は円く突出し、腹縁に11~16本の弱い棘があるが、後縁の棘と連続しない。口は大きくて、上顎(じょうがく)の後端は目の後縁下を越える。体色黒色または黒褐色で、骨格の隆起物の縁は白い。口腔(こうこう)と鰓腔は真黒色。体長は12センチメートルぐらいになる。水深2000メートルまでの中深層~漸深層に生息する遊泳性魚類で、中層トロールでとれる。日本の海域から、本科には14種、本属には5種知られているが、本種は眼径が吻長(ふんちょう)より小さいこと、前鰓蓋骨の腹縁の棘と後縁の棘が分かれていること、背びれは12~13軟条であることなどで他種と区別できる。利用価値はないが、サケマグロ、そのほかの大形魚の餌料(じりょう)生物として重要である。

[尼岡邦夫 2015年11月17日]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「カブトウオ」の意味・わかりやすい解説

カブトウオ
Poromitra cristiceps

カンムリキンメダイ目カブトウオ科の海水魚。体長 14cmになる。体はやや側扁し,やや長い。頭は大きく,骨質の隆起とくぼみに富む。体色は紫黒色。深海性。東北沖,小笠原諸島近海,太平洋,インド洋大西洋の熱帯から亜寒帯海域に分布する。

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世界大百科事典(旧版)内のカブトウオの言及

【尾】より

… 脊椎動物の尾はすべて相同器官で,もとは原始魚類の水中での推進器官であった。古生代のカブトウオ(甲皮類)の尾は上下非対称形で上葉または下葉が他の葉より大きく,脊柱は尾の付け根で上または下へ折れ曲がり大きいほうの葉の支柱になっていた。このように上葉が大きい尾を異尾(不正尾),下葉の大きい尾を逆異尾(逆不正尾)と呼ぶ。…

【甲冑魚】より

…甲冑魚は水底に生活したもの,表層や中層を遊泳したものなど多様化していたが,古生代の終りまでに絶滅してしまった。甲冑魚を“カブトウオ”と称している本があるが,本当のカブトウオ類は硬骨魚綱条鰭(じようき)亜綱真骨上目のキンメダイ目に属する1科カブトウオ科Melamphaidaeのものであるので注意する必要がある。甲冑魚はまだ日本からは報告されていないが,発見される可能性はあると言える。…

【甲】より

…脊椎動物の甲の骨格の大部分は皮骨である。 古生代中期の唯一の脊椎動物だったあごをもたない原始魚類,無顎類の多くは頭部ないし体の前半部が堅固な甲に覆われ,そのためこれらは甲皮類,甲冑(かつちゆう)魚,カブトウオなどの別名で総称される。頭部の甲を頭甲,胸部の甲を胸甲という。…

※「カブトウオ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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