知恵蔵 「キュリオシティ」の解説
キュリオシティ
キュリオシティの名は全米の児童・生徒から公募され、カンザス州の少女が提案したもので「好奇心」の意。これまでに火星に送られた探査車のなかでは群を抜く大きさで、長さ3メートル、総重量は約900キログラム、小型トラクターほどのサイズ。大きな重量の探査機を火星表面に着陸させるために新しい降下システムが運用された。パラシュートやロケット噴射、スカイクレーンという降下装置からキュリオシティをつり下げて軟着陸させる方法などを組み合わせた複雑なシステムである。着陸地点は、かつては湖を形成していた可能性があると考えられているゲール・クレーター。
キュリオシティの走行速度は、自律航法では最大時速90メートル程度、2年の活動期間中に19キロメートル以上の距離を移動する予定。リアルタイムOSであるVxWorksによって制御され、岩盤の掘削もできるロボットアームなどを装備。車体には17個のカメラを搭載して3D動画や顕微鏡画像を撮影、数メートル離れた場所から赤外線レーザーで土壌や岩の表面を蒸発させスペクトル分析を行う装置や、粉末サンプル中の鉱物の特定などを行うなどの多彩な実験設備を搭載。動力源として、プルトニウムの原子核崩壊による熱エネルギーを取り出す原子力電池(RTG、Radioisotope Thermoelectric Generator)を用いる。このため、太陽電池のような夜間や季節による制約を受けることなく、長期にわたって安定した電力を得ることが可能である。
(金谷俊秀 ライター / 2012年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報