ティタン神族の一人イアペトスとクリュメネとの子で巨人神。プロメテウスらの兄弟。オリュンポス神族との戦い(ティタノマキア)に敗れ,罰として世界の西の果てで蒼穹(そうきゆう)を支える役を課せられた。彼の娘たちヘスペリデスの守る黄金のリンゴをヘラクレスがとりにきたとき,アトラスがリンゴをとってやる代りに,一時彼に蒼穹を背負わせた話は有名。アトラスの複数形アトランテスatlantesはカリアティード(女人像柱)の対になる〈男性像柱〉を意味する建築用語で,アクラガスのオリュンピエイオンにその最初の使用例が残っている。地理学では,アトラスはアフリカ北西海岸に沿って東西に伸びる巨大な山脈の名称。また〈地図帳〉を意味するアトラスは,16世紀の地図学者メルカトルがこの巨人神を自分の地図帳の装飾に使用したことによる。
執筆者:福部 信敏
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ギリシア神話の巨人の神。イアペトスとクリメネの子で、ティタン神族の一人。兄弟にはメノイティオス、プロメテウス、エピメテウスがいる。一説にはウラノスの子で、したがってクロノスの兄弟にあたる。オリンポス神族以前の神々の世代に属すアトラスは、他のティタン神族とともにオリンポスの神々と戦ったため、その罰として、ゼウスによって蒼穹(そうきゅう)(天空)を肩にのせて支える役を課せられた。彼は普通西の果てのヘスペリデスの国に住むといわれていることから、歴史家ヘロドトスは北アフリカの山脈をアトラスとよんだ。ペルセウスは、怪物ゴルゴン退治のあとアトラスにメドゥサの首を見せて、彼を岩塊に変えたといわれる。
アトラスは、プレイオネからプレイアデスとヒアデス、またヘスペリスからヘスペリデスの娘たちを得た。ディオネも彼の娘と考えられており、さらに息子にはヒアスとヘスペロスがいる。後の伝承では、アトラスは天文学者(「地図」の名称の起源)、羊飼い、王などのさまざまな解釈が与えられている。
[小川正広]
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…多数の地図を一定の編集方針のもとに集録して,必要な解説などを付し,書籍の形にまとめたものを地図帳またはアトラスと呼んでいる。アトラスはギリシア神話の巨人神だが,G.メルカトルがその地図帳にアトラスの名を冠して以来,欧米では地図帳をアトラスと呼ぶようになった。…
…それはアジアとリビュアつまりアフリカを合わせたよりも大きく,ポセイドン神の5組の双生児が島を10分して支配していた。最年長の初代の王アトラスにちなんで島は命名され,そのまわりの海も〈アトラスの海〉(つまり大西洋のこと)と呼ばれたという。整然たる都市計画と強力な軍事組織を備え,ヨーロッパやリビュアの一部まで支配下に置いていたが,彼らはさらにヨーロッパとアジアとを一挙に隷属させようとして侵攻した。…
…しかし,ボエジャーはさらに多くの衛星を発見または確認し(いくつかは地上で発見されていた),その総数は21~23となった。ボエジャーの確認した衛星のうち番号がつけられたのはXヤヌス,XIエピメテウス,XIIヘレーネ,XIIIテレスト,XIVカリプソ,XVアトラス,XVIプロメテウス,XVIIパンドラ,XVIIIパンの9個である。テレスト,カリプソはテチスと,ヘレーネはディオーネと同じ軌道上で60゜前と後のいわゆる三体問題の正三角形解に相当する場所(ラグランジュ点)に存在している。…
…頭蓋は宇宙の形に似せて球状につくられているというプラトン(《ティマイオス》)の説は,中世末期以後長く信じられた。現代の解剖学でも,頭蓋骨を支える第1頸椎をアトラス(ギリシア神話の天を肩で支える巨人)と呼んでいる。同様にユダヤ神秘主義カバラの書《ゾーハル》は,世界を包む球状の覆いを〈大頭蓋骨〉と称する。…
…(11)世界の西の果てにあるヘスペリデスの園から黄金のリンゴを取ってくること。園の近くに蒼穹を肩で支えている巨人神アトラスがいたので,ヘラクレスは彼にかわって蒼穹を背負い,その間にアトラスがリンゴを取ってきた。ヘラクレスがプロメテウスの肝臓をついばんでいた鷲を射殺して彼を解放してやったのは,この旅の途上でのできごと。…
※「アトラス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...
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