日本大百科全書(ニッポニカ) 「アトラス」の意味・わかりやすい解説
アトラス
あとらす
Atlās
ギリシア神話の巨人の神。イアペトスとクリメネの子で、ティタン神族の一人。兄弟にはメノイティオス、プロメテウス、エピメテウスがいる。一説にはウラノスの子で、したがってクロノスの兄弟にあたる。オリンポス神族以前の神々の世代に属すアトラスは、他のティタン神族とともにオリンポスの神々と戦ったため、その罰として、ゼウスによって蒼穹(そうきゅう)(天空)を肩にのせて支える役を課せられた。彼は普通西の果てのヘスペリデスの国に住むといわれていることから、歴史家ヘロドトスは北アフリカの山脈をアトラスとよんだ。ペルセウスは、怪物ゴルゴン退治のあとアトラスにメドゥサの首を見せて、彼を岩塊に変えたといわれる。
アトラスは、プレイオネからプレイアデスとヒアデス、またヘスペリスからヘスペリデスの娘たちを得た。ディオネも彼の娘と考えられており、さらに息子にはヒアスとヘスペロスがいる。後の伝承では、アトラスは天文学者(「地図」の名称の起源)、羊飼い、王などのさまざまな解釈が与えられている。
[小川正広]