日本大百科全書(ニッポニカ) 「木星探査機」の意味・わかりやすい解説
木星探査機
もくせいたんさき
木星は太陽系のなかで大きさ、質量ともに最大の惑星である。木星の内部構造は、中心にさまざまな元素が混合した高密度の中心核があり、もっとも外側の大気層は、約90%の水素と約10%のヘリウムガスからなる巨大ガス惑星である。磁場の強さは地球磁場の約14倍に相当する。この強い磁場のため、木星の極には常時オーロラが生じる。木星には67個の衛星が発見されており、そのうち51個は直径10キロメートルに満たない小さな衛星である。大きな四つの衛星であるイオ、ユーロパ(エウロパ)、ガニメデ、カリストはガリレオ衛星とよばれる。
探査機のフライバイ(近傍通過)による木星の初めての観測は、1972年3月に打ち上げられたアメリカのパイオニア10号によるもので、約20万キロメートルの距離から500枚以上の写真を撮った。姉妹機のパイオニア11号は1973年4月に打ち上げられ、木星に3万4000キロメートルまで接近して観測を行った。その後、1979年の3月と7月にボイジャー1号、2号が木星近傍を通過する際に木星の環を観測、また衛星イオの火山活動やユーロパ表面の水で構成された氷の存在を発見した。
ユリシーズ(Ulysses)はNASA(ナサ)(アメリカ航空宇宙局)とESA(イーサ)(ヨーロッパ宇宙機関)の共同プロジェクトで、スペースシャトル(1990年10月打上げ)によって地球の低軌道に投入された。ユリシーズは太陽の高緯度を観測する軌道に投入するために、木星をスイングバイに利用した。この際に、木星の磁気圏の詳細観測を行った。
NASAのカッシーニは土星探査が主目的であるが、1999年に木星に接近し、木星大気の詳細な映像を撮影した。
同様にNASAのニュー・ホライズンズは2007年に木星を通過する際に木星とその衛星の観測を行った。
ガリレオもNASAにより1989年10月にスペースシャトルで打ち上げられ、1995年に木星に到達して周回観測機と降下プローブ(大気観測機)の二つに分離して観測を行った。ガリレオは木星の周回観測を行った初めての探査機となった。周回機は木星本体のほかに四つのガリレオ衛星に接近して大気や表面の詳細観測を行った。プローブは木星大気に突入し、通信が途絶するまでの57分間に大気中を約600キロメートル降下し、大気成分、温度、風速等を測定した。周回機は2003年に探査を終了し、木星大気に突入させてミッションを終了した。
アメリカの木星探査機ジュノー(Juno)は2011年にアトラスⅤ型ロケットで打ち上げられ、5年後の2016年に木星の極軌道への投入に成功し、木星の組成、重力場、磁場、極付近の磁気圏などを探査している。ジュノーは2017年末まで探査を行い、木星に突入してミッションを完了する予定である。
EJSM(Europa Jupiter System Mission、ユーロパ・ジュピター・システム・ミッション)はNASAとESAによる共同の木星探査計画で、とくに木星の磁気圏と木星の衛星であるユーロパとガニメデに主眼を置き、2020年に探査機を打ち上げる予定である。
[森山 隆 2017年6月20日]