日本大百科全書(ニッポニカ) 「ドリル」の意味・わかりやすい解説
ドリル(工具)
どりる
drill
工作物に穴をあけるための工具で、主としてボール盤に取り付けて使用される。ドリルを用いた穴あけ作業は、切削加工のなかでも占める割合が大きく約3割にも及ぶといわれている。
ドリルのなかでもっとも広く用いられているのはツイストドリル(ねじれ錐(ぎり))であるが、このほかにフラットドリル(平錐)、センター穴ドリル、ガンドリルなどがある。ツイストドリルは切刃をもつ本体とつかみしろとなるシャンク部からなり、シャンクにはテーパーのついたテーパーシャンクと円筒形状のストレートシャンクの2種がある。フラットドリルは古くから使用されていたが、すくい角をつけにくい、正確な穴を加工しにくい、切屑(くず)の排出がめんどうであるという理由で、あまり用いられなくなっている。センター穴ドリルは、工作物を各種工作機械のセンターで支持するときに必要なセンター穴の加工や、大径ドリルの食い付きをよくするための下穴の加工などに用いられる。ガンドリルは穴径の20倍以上の深穴を加工するときに用いられる。このほかに特殊ドリルとしてコアドリル、ドリルリーマ、段付きドリル、皿取りドリル、ジグボーラ用ドリル、ラチェットドリル、シェルドリル、三角ドリル、油穴付きドリル、BTA(Boring and Trepanning Associationの略で、この協会で開発された)工具など各種形状のものがある。
ドリルの材質としては高速度鋼が多用されているが、刃先を超硬合金製として交換式にしたものもある。
[清水伸二]
ドリル(動物)
どりる
drill
[学] Papio leucophaeus
哺乳(ほにゅう)綱霊長目オナガザル科の動物。ヒヒ属のなかではまれな森林性の種で、カメルーン、ガボン、コンゴの熱帯多雨林に分布する。体毛は暗褐色で、顔の周囲の毛は白い。雄の無毛の顔はつやのある鉄色で、臀部(でんぶ)の性皮と下顎(かがく)は鮮やかな紅色を呈す。体長は雄で70センチメートル。性差が大きく、雌は小形である。尾は短く12センチメートル。地上性の傾向が強く、林床で過ごす時間が長いが、休眠は樹上で行う。食性は雑食性で、小動物も好む。群れは10~50頭の複雄群といわれるが、その社会構造などは明らかにされていない。マンドリルP. sphinxとは近縁で、両種をヒヒ属から独立させ、マンドリル属Mandrillusとする考え方もある。
[川中健二]
ドリル(反復練習)
どりる
drill
技能を定着させたり、その正確性、速さを高めたりするための反復練習のこと。ただし、運動的技能に対してではなく、漢字の読み書き、数の計算などの知的技能に対して使われることが多い。
ドリルの学習における位置づけは時代によって大きく変化してきたが、今日では、技能が、知識・理解、考え方、関心・態度とともに、目標の一分野を占め、技能の定着などのためにドリルは必要不可欠なものであるとされており、その位置、役割が安定してきた。ドリルを効果的に行うには、子供の十分な理解に基づくこと、系統的・計画的に行うこと、目的意識をもたせ、進歩がわかるようにしてやること、などがたいせつである。
[中原忠男]
ドリル(織物)
どりる
drill
わが国で、雲斎織という組織に同じものである。経緯(たてよこ)糸に18番手(綿番手)以下の糸を使い、綾織(あやおり)(2―1、3―1など)にした織物。用途に応じて、カーキ染めなどの無地染めにする。織物重量は中級から重目(おもめ)の綾織にした綿織物で、細綾ドリル、太綾ドリルなどの区別があるが、現在では化合繊維、あるいは綿との混紡糸を使用したものがみられる。古くは足袋(たび)底にしていたが、現在では一般に広い用途をもち、運動服、作業服、靴裏地、工業用織物など、じょうぶで強度を必要とするものに使われる。
[角山幸洋]