日本大百科全書(ニッポニカ) 「キリシマミドリシジミ」の意味・わかりやすい解説
キリシマミドリシジミ
きりしまみどりしじみ / 霧島緑小灰蝶
wonderful hairstreak
[学] Chrysozephyrus ataxus
昆虫綱鱗翅(りんし)目シジミチョウ科に属するチョウ。日本では本州(神奈川県の箱根、山梨県笛吹(ふえふき)市芦川(あしかわ)町域より南西の各地の山地)、四国、九州、対馬(つしま)、屋久(やく)島に分布し、照葉樹林帯上部のアカガシ、ウラジロガシを含む林に発生する。外国では中国南西部、アッサムより北西ヒマラヤ地方にかけて分布するが、ヒマラヤに産するものは日本産とは外観にかなり著しい相違があり、日本産とは別種である可能性が強い。台湾山地にも日本産と近似のものを産する(現在は別種とされている)。はねの開張38~42ミリメートル程度。はねの表面は雄では金緑色、雌では暗褐色で前ばねに紫色斑(はん)がある。裏面の色彩や斑紋は雌雄でまったく異なるが、日本産のミドリシジミ類では雌雄で裏面の斑紋が異なるのは本種のみである。年1回の発生(7~8月、雌の生き残りは10月まで)。食草はアカガシ、ウラジロガシ、ツクバネガシなどのブナ科植物。卵は食草の休眠芽の基部付近に産み付けられ、卵態で越冬する。
[白水 隆]