1999年に登録、2010年に登録内容が変更されたオーストリアの世界遺産(文化遺産)。シュタイアーマルク州の州都であるグラーツ市は、オーストリアで人口第2の都市(約25万人)である。この町の起源は、神聖ローマ帝国の時代に設けられた砦で、町の名前はスラブ語の「小さな砦」を意味する「グラデツ」に由来する。中世には都市として栄え、1586年に創設されたグラーツ大学はヨハネス・ケプラーなどさまざまな学者が教壇に立ったことでも知られる。町並みはシュロスベルクの丘を囲うように広がっており、旧市街には中世からのゴシック様式、ルネサンス様式、バロック様式などの建造物が建ち並び、シュロスベルクの丘の頂から見下ろす旧市街の町並みは、赤茶色のレンガの屋根が連なる中世の町そのものである。歴史主義、ユーゲントシュティール(アールヌーボー)から現代建築まで、ヨーロッパを代表する主要な建築様式が融け合って、美しく落ち着いた古都のたたずまいを見せている。こうした建造物の保存状態がきわめて良好なことが評価され、世界遺産に登録された。また、2010年にエッゲンベルグ城が追加登録された。この城は大坂城と友好城郭提携を結んでいる。◇英名はCity of Graz‐Historic Centre and Schloss Eggenberg