平岩弓枝(読み)ヒライワユミエ

デジタル大辞泉 「平岩弓枝」の意味・読み・例文・類語

ひらいわ‐ゆみえ〔ひらいは‐〕【平岩弓枝】

[1932~2023]小説家劇作家。東京の生まれ。親しみやすいタッチで幅広いテーマを扱い、さまざまな時代を生きた女性を描き出し、共感を集める。「鏨師たがねし」で直木賞受賞。他に「花影の花」「御宿おんやどかわせみシリーズなど。テレビドラマの台本作家としても「肝っ玉かあさん」などのヒット作を送り出している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「平岩弓枝」の意味・わかりやすい解説

平岩弓枝
ひらいわゆみえ
(1932―2023)

小説家、劇作家。東京生まれ。日本女子大学国文科卒業。長谷川伸(はせがわしん)、戸川幸夫(ゆきお)に師事し、1959年(昭和34)『鏨師(たがねし)』によって直木賞を受賞。以後小説はもとより、ラジオ・テレビの脚本、劇作などに人気を博す。女の生き方をテーマに『おんなみち』(1969)、『女の顔』(1970~1971)、『彩(あや)の女』(1973)、『花ホテル』(1983)、史伝・時代ものに『日野富子』(1971)、『御宿(おんやど)かわせみ』(1980)、劇作に『百年目の幽霊』『紅梅館おとせ』(ともに1986。舞台脚本集)、テレビ脚本に『旅路』(1967)、『肝っ玉(きもったま)かあさん』(1971)、そのほかミステリーものなど多彩な作品がある。『御宿かわせみ』は2006年(平成18)刊の『浮かれ黄蝶(きちょう)』まで、シリーズで34冊書き継がれた。シリーズとしては『はやぶさ新八御用帳』(1989~1999)もあり、v『幽霊屋敷の女』(1999)で10冊となった。

 そのほかの作品に『若い真珠』(1966)、『若い海峡』(1969)、『下町の女』(1972)、『女の気持』(1974)、『女の河』(1977)、『女の幸福』『風子』『火の航跡』『日影の女』(いずれも1978)、『午後の恋人』(1979)、『色のない地図』(1981)、『湖水祭』(1983)、『白い序章』(1985)、青の三部作『青の伝説』『青の回帰』『青の背信』(1985~1986)、『風よ ヴェトナム』(1998)、ロマンミステリー『幸福の船』(1998)、時代小説としては、「忠臣蔵」後の秘められたドラマに光をあてた『花影(はなかげ)の花――大石内蔵助(くらのすけ)の妻』(1990。吉川英治文学賞)、『水鳥の関』(1996)、天保の改革に辣腕(らつわん)を振るった鳥居耀蔵(ようぞう)を描いた『妖怪』(1999)、王朝伝奇小説『平安妖異伝』(2000)、田沼意次(おきつぐ)の名誉回復を図る『魚の棲(す)む城』(2002)、初の半生記『極楽とんぼの飛んだ道――私の半生、私の小説』(1999)など。なお、前述の直木賞のほかに、1979年NHK放送文化賞、1987年菊田一夫演劇賞大賞、1998年(平成10)菊池寛賞などを受賞している。1997年紫綬褒章(しじゅほうしょう)受章。2004年文化功労者。

[遠矢龍之介]

 2016年に文化勲章受章。

[編集部 2018年11月19日]

『『鏨師』(1959・新小説社)』『『若い真珠』(1966・集英社)』『『若い海峡』(1969・集英社)』『『おんなみち』(1969・講談社)』『『女の顔』上下(1970~1971・文芸春秋)』『『肝っ玉かあさん』(1971・文芸春秋)』『『下町の女』(1972・文芸春秋)』『『女の気持』(1974・中央公論社)』『『女の河』(1977・文芸春秋)』『『女の幸福』(1978・文芸春秋)』『『風子』(1978・新潮社)』『『火の航跡』(1978・朝日新聞社)』『『日影の女』(1978・文芸春秋)』『『午後の恋人』(1979・文芸春秋)』『『御宿かわせみ』シリーズ(1980~2006・文芸春秋)』『『色のない地図』(1981・文芸春秋)』『『湖水祭』(1983・サンケイ出版)』『『花ホテル』(1983・新潮社)』『『白い序章』(1985・中央公論社)』『『青の伝説』『青の回帰』『青の背信』(1985~1986・講談社)』『『平岩弓枝自選長篇全集』全15巻(1987~1989・文芸春秋)』『『はやぶさ新八御用帳』シリーズ(1989~1999・講談社)』『『花影の花――大石内蔵助の妻』(1990・新潮社)』『『水鳥の関』(1996・文芸春秋)』『『風よ ヴェトナム』(1998・新潮社)』『『幸福の船』(1998・新潮社)』『『極楽とんぼの飛んだ道――私の半生、私の小説』(1999・講談社)』『『妖怪』(1999・文芸春秋)』『『平安妖異伝』(2000・新潮社)』『『魚の棲む城』(2002・新潮社)』『『旅路』上中下(角川文庫)』『藤森秀郎著『平岩弓枝「御宿かわせみ」写真帖』(1990・文芸春秋)』『河野多恵子編『女性作家シリーズ11 平岩弓枝』(1997・角川書店)』『我孫子晴美著『平岩弓枝。家族のかたち』(1997・PHP研究所)』『立原洋一著『「御宿かわせみ」百八十話の謎――江戸の人々の光と影』(1997・本の森出版センター)』

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百科事典マイペディア 「平岩弓枝」の意味・わかりやすい解説

平岩弓枝【ひらいわゆみえ】

小説家,脚本家。東京生れ。日本女子大国文科卒,中世文学専攻。代々木八幡宮司の家に生まれ,幼い頃から日本舞踊など古典芸能を習う。戸川幸夫に師事し,長谷川伸主宰の研究会〈新鷹会〉に入って小説修業。《大衆文芸》に発表した《鏨師(たがねし)》(1959年)で直木賞受賞。以後,現代小説,時代小説,推理小説の分野で活躍。さらに演劇,テレビドラマの世界にも活動の舞台を広げた。主な作品に《女の顔》(1970年),《肝っ玉かあさん》(1971年),《御宿かわせみ》シリーズ(1974年―)などがある。

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「平岩弓枝」の解説

平岩弓枝 ひらいわ-ゆみえ

1932- 昭和後期-平成時代の小説家。
昭和7年3月15日生まれ。長谷川伸,戸川幸夫に師事。昭和34年「鏨師(たがねし)」で直木賞。時代小説「御宿(おんやど)かわせみ」シリーズ,テレビドラマ脚本「肝っ玉かあさん」「ありがとう」などをかき,多彩に活躍する。平成3年「花影の花」で吉川英治文学賞。10年菊池寛賞。16年文化功労者。20年「西遊記」で毎日芸術賞。東京出身。日本女子大卒。

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