サットンの式(読み)サットンノシキ

化学辞典 第2版 「サットンの式」の解説

サットンの式
サットンノシキ
Sutton's formula

ばい煙(一般には煙突,そのほかの煙源から排出される気体状汚染物質)の拡散式の一つ.O.G. Sutton(1932,1953年)がA. Fickの(分子)拡散方程式に,乱流に関する統計的手法を適用して,乱流拡散の場合について,風速は一定との仮定のもとに導いた諸式をいう.たとえば,点煙源から連続的にばい煙が排出される場合,

となる.ここで,c風下のある場所(x,y,z)におけるばい煙濃度xは煙源からの距離,yは煙軸と直角方向の水平距離,zは地上からの高さ,qはばい煙の単位時間の排出量,uは風速(x方向),He は有効煙突高さである.n大気の安定度に関するパラメーターで0.2~0.5の値,CyCzサットン拡散係数とよばれ,大気の安定度と煙源の高さで決まる定数である.この式でz = 0とおけば,地表面におけるばい煙の濃度を表す次式が得られる.

この式が実際問題にもっともよく用いられる.また,この式から,ばい煙の最大着地濃度 cmax,および煙源からのその距離 xmax を表す式が導かれる.

上記のサットンの式において,

とおくと,汚染物質の濃度が,煙軸を中心とした正規分布(ガウス分布)をとると仮定して導かれた拡散式と同じになる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

法則の辞典 「サットンの式」の解説

サットンの式【Sutton's formula】

気体状汚染物質(煤煙など)の拡散様式を示す式の一つである.フィックの分子拡散の方程式に乱流としての統計的取扱いを導入して得られた式である.煙突その他の排出口から出たガスや煙などは,大気中に存在するいろいろな乱流要因のために拡散を起こす.有風時のプリューム型の拡散に対しては,一般に次の式が成り立つとされている.

ここで Cxyz)は,煙突の基底を(0,0,0)として,風の方向を x,これに直角な水平方向を y,垂直方向を z としたときの座標xyz)における煙の濃度に当たる.Q は単位時間当たりの排出量,U は風速,He は有効煙突高度,σy と σz は正規分布の標準偏差で,拡散パラメータ,またはサットンの拡散定数と呼ばれる.

この式で z=0とおけば地表面における煤煙濃度を表す次の式が得られるが,通常「サットンの式」として使われるのはこちらのほうである.

出典 朝倉書店法則の辞典について 情報

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