改訂新版 世界大百科事典 「タンゼロ」の意味・わかりやすい解説
タンゼロ
tangelo
ミカン類Citrus reticulata Blanco(英名tangerine)とグレープフルーツC.paradisi Macf.(英名pomelo)またはブンタン類C.grandis Osbeck(英名pummelo)の交雑により生じたかんきつ類の一群の総称で,名まえは合成語(tang-elo)である。両親の形質の中間で種々に変異がみられる。常緑小高木で,一般に花は総状花序を形成し,5月に白色5弁花が咲く。翼葉はグレープフルーツ,ブンタンに比べ小さい。果実の肉質は一般に軟らかく,多汁のものが多い。ミカン類とグレープフルーツとの雑種からは,果実がミカン類に近く,赤橙色で芳香のあるものが多く選抜されている。東南アジア,日本などで自然交雑によって生じており,ナツミカンもこの群の一つといわれる。人為的にはダンシータンゼリンにダンカングレープフルーツを交配して初めて育成され,1904年,スウィングルW.T.Swingleらによりサムソンタンゼロと命名された。同種は24年日本に導入された。当初はグレープフルーツがかかりやすいかいよう病に対する抵抗性品種を育成することが主目標であったが,今日ではブンタンの多汁性,大果性とミカンの剝皮性,甘みを兼備した品種の育成が重要なねらいとなっている。実用品種にアメリカで育成したオーランド,セミノール,ミネオラなどがある。日本でも,スイートスプリング(上田温州×ハッサク),サマーフレッシュ(ハッサク×ナツミカン)がタンゼロとして81年に公表された。前者は果皮がハッサクで肉質がウンシュウミカンに近い食味のよい早春向け生食用品種。後者はやや酸味は強いが,ナツミカンより美麗で,果肉がハッサクに似た爽快味あふれる晩生種。タンゼロにタンゼリンを戻し交配したノバ,リーなどのタンゼリン・タンゼロtangerine-tangeloも育成されている。
執筆者:山田 彬雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報