日本大百科全書(ニッポニカ) 「かいよう病」の意味・わかりやすい解説
かいよう病
かいようびょう / 潰瘍病
柑橘(かんきつ)類およびトマトの病気で細菌の寄生によっておこる。いずれも人の膿瘍(のうよう)(おでき)に似た潰瘍状の病斑(びょうはん)をつくる。柑橘類のかいよう病の病原細菌はキサントモナス・キャンペストリス・シトリXanthomonas campestris pv. citriで、葉、枝、果実に褐色の盛り上がった病斑ができる。病斑は古くなると中央部はくぼんで灰白色になる。ネーブル、レモン、ダイダイ、ザボンはとくにかかりやすく大きな被害を受けるが、ウンシュウミカンは比較的強く、キンカン、イヨカンはほとんどかからない。窒素質肥料の多用を避け、有機銅剤を散布して防ぐ。
トマトかいよう病は欧米では古くから知られた重要な病気で、日本では1958年(昭和33)に初めて北海道で発見され、その後急速に広がった。病原細菌はクラビバクター・ミシガネンシス・ミシガネンシスClavibacter michiganensis subsp. michiganensisである。病気にかかると茎は褐色になり、のちに空洞になる。葉は縁(へり)から枯れ、果実に潰瘍状の病斑ができる。被害が甚だしいときはほとんど収穫できなくなる。この病気は種子および土壌によって伝染する。
このほか、チューリップ、サツマイモにもかいよう病がある。チューリップではトマトかいよう病菌と近縁の細菌によっておこり、サツマイモではカビの一種であるフザリウムFusariumの寄生によっておこる。
[梶原敏宏]