改訂新版 世界大百科事典 「ターフェルムジーク」の意味・わかりやすい解説
ターフェルムジーク
Tafelmusik[ドイツ]
食卓音楽の意。王侯貴族や富裕階級の食事,宴会に食卓のかたわらで演奏される一種の社交音楽。古代エジプトから存在していたと考えられるが,この名称が出現しジャンルとしても確立されたのは16世紀以後のヨーロッパである。特にルネサンス,バロック時代では,食事や祝宴は音楽を演奏する重要な機会で,17,18世紀には曲集も多数出版された。演奏曲目は娯楽的で舞曲組曲やトリオ・ソナタ,ソロ・ソナタ,序曲,室内カンタータ,アリア,クオドリベットなどが小編成で供された。演奏者は宮廷楽団員や都市の合唱隊,職業音楽家組合員Stadtpfeiferらであった。シャインの《音楽の饗宴》(1617),テレマンの3巻の《食卓の音楽》(1733)は有名。このジャンルは18世紀後半にはディベルティメントやセレナードなどに取って代わられた。
執筆者:土田 英三郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報