ドイツ・バロックの作曲家。当時はバッハ以上の人気を誇り、ドイツ最高の作曲家とみなされていた。3月14日、中部ドイツ、マクデブルクの牧師の子に生まれたが、4歳で父を亡くし、女手ひとつで育てられた。故郷のカントルに手ほどきを受けたほかは独学で音楽を学び、12歳でオペラを作曲するほどの早熟ぶりだったが、将来を危ぶんだ家族に以後音楽を禁じられ、ツェラーフェルト、ヒルデスハイムへと転校させられた。しかしいずれも師の理解を得てひそかに音楽を続けたテレマンは、1701年、母の望みに従い、ライプツィヒ大学で法律を学ぶこととなる。ところがライプツィヒではたちまち作曲家として頭角を現し、学生ながらクーナウと並び称される音楽家として、教会音楽、オペラ、さらに自ら創設した学生音楽団体コレギウム・ムジクムの演奏と、華々しい活躍を示した。05年ゾーラウ(現ポーランドのジャリ)宮廷楽長となり、リュリやカンプラの器楽を知ったほか、ポーランドの民俗音楽に触れる機会も得た。
1708年、宮廷楽長としてアイゼナハに移り、当時ワイマール宮廷オルガン奏者だったバッハと親交を結んでいる。12年フランクフルト跣足(せんそく)教会楽長となり、やがて同市音楽監督に昇進。当時作曲したブローケスの歌詞に基づいた受難曲は、彼の名声を大いに高めたものである。21年ハンブルクに移り、同市の教会音楽監督となったテレマンは、翌22年ハンブルク・オペラの監督を兼務し、国際的な名声を確立した。器楽曲集『食卓の音楽』(1733刊)の予約注文は、ドイツ各地にとどまらず、北欧、ロシア、イギリス、フランスからも寄せられるほどだった。ゾーラウ時代以来、約1000曲の管弦楽組曲、膨大な数のカンタータ、受難曲、オラトリオ、さらに『ピンピノーネ』(1725初演)に代表されるオペラなど、驚くべき多作を誇るテレマンは、また、3種の自伝を残す、機知に富んだ文筆家でもあった。67年6月25日ハンブルクに没。
[樋口隆一]
『K・グレーベ著、服部幸三・牧マリ子訳『テレマン――生涯と作品』(1981・音楽之友社)』
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ドイツ・バロックの代表的作曲家のひとり。マクデブルクに生まれる。J.S.バッハの同時代者で,生前はバッハをしのぐ名声を得た。マクデブルク,ヒルデスハイムなどで教育を受けた後は,1701年にライプチヒ大学に入学。この在学中に学生の演奏団体コレギウム・ムシクムを組織したり,新教会のオルガニスト兼音楽監督に就任したりした。1704年にライプチヒをはなれ,ゾーラウ(現在ポーランドのジャリ),アイゼナハ,フランクフルトなどの宮廷楽長を歴任。そして21年から死の67年までの46年間,ハンブルクの都市音楽監督兼ザンクト・ヨハネ高等学校カントルとして活躍した。この間,クーナウの死(1722)によって空席となったライプチヒのトマス・カントルの地位が誰よりも先にテレマンに申し出られたことは,バッハの伝記を通じてよく知られているとおりである。ハンブルク時代のテレマンは,国際的にもその名を知られていた。彼の器楽の代表作《ターフェルムジーク》(1733)の出版に当たっては,ドイツ各地ばかりか,北欧,ロシア,イギリス,フランスからも予約注文が寄せられた。テレマンは音楽史上最も多作な作曲家のひとりで,作品は受難曲46曲,教会カンタータ1700曲以上,オペラ40曲以上,室内楽曲350曲以上,協奏曲120曲,管弦楽曲140曲のほか,おびただしい数の教会音楽,宗教的作品,オラトリオがある。作風は当時のあらゆる傾向をふくみ,バロックから前古典派への変遷に重要な役割を果たした。
執筆者:東川 清一
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…物質的にも精神的にも恵まれた生活を反映するかのように,ケーテン時代の作品には生命の喜びが躍動している。
[後期(1723‐50)]
1722年6月,ザクセンの大都市ライプチヒではトーマス教会カントルの大作曲家J.クーナウが没し,後任としてハンブルクの音楽監督テレマンやダルムシュタットの宮廷楽長グラウプナーChristoph Graupner(1683‐1760)らが候補に上がった。しかし彼らが就任を拒否したため,市参事会は〈最良の人物が得られない以上,中庸な者でがまんしなければなるまい〉と言って,23年4月にバッハの採用を決定した。…
※「テレマン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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