ディオニソス的・アポロン的(読み)でぃおにそすてきあぽろんてき(英語表記)dionysisch ドイツ語

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ディオニソス的・アポロン的
でぃおにそすてきあぽろんてき
dionysisch ドイツ語
apollinisch ドイツ語

ギリシア神話の酒神ディオニソスのうちに示される陶酔的・創造的衝動と、太陽神アポロンのうちに示される形式・秩序への衝動との対立を意味する。すでにシェリングは、内容が形式に優越する詩と、両者が調和した本来の詩との対立を、またニーチェの師リッチュルは笛(ギリシア語でアウロスaulos)と竪琴(たてごと)(ドイツ語でキタラKithara)との対立を、この対概念でとらえている。しかしこの対概念が広まった機縁は、ニーチェの『音楽の精神からの悲劇の誕生』(1872)である。すべてを仮象のうちに形態化・個体化する造形芸術の原理としてのアポロン的なものが、個体を陶酔によって永遠の生のうちに解体する音楽芸術の原理としてのディオニソス的なものと結び付いて、ギリシア悲劇が誕生する。それはいったん楽天的・理論的なソクラテス主義によって滅亡したが、ワーグナーの楽劇のうちに再生すると若いニーチェは考えた。ただし、後年のニーチェはこの対概念を用いず、永遠に創造し破壊する生の肯定という彼の哲学の核心を、ディオニソス的と規定している。

[小田部胤久]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

大臣政務官

各省の長である大臣,および内閣官房長官,特命大臣を助け,特定の政策や企画に参画し,政務を処理する国家公務員法上の特別職。政務官ともいう。2001年1月の中央省庁再編により政務次官が廃止されたのに伴い,...

大臣政務官の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android