改訂新版 世界大百科事典 「トビア」の意味・わかりやすい解説
トビア
Tobias
旧約聖書外典《トビト書》中の人物。ニネベの人で,父トビトの貸金を取りたてる目的でラゲスにおもむくが,彼に同行したアザリヤは実は天使ラファエルであった。トビアはティグリス川で魚の胆汁を得,それをたずさえて旅を続ける。途中,親族ラグエルの娘サラと結婚し,その夜ラファエルの助言によって,サラを苦しめていた悪霊を退散させた。トビアは金を持ってニネベに戻り,魚の内臓によって父の眼もいやされる。西洋美術では〈トビアとトビトの別れ〉〈トビアとラファエルの旅〉〈トビアの結婚〉〈トビアの帰還〉などの場面が描かれ,なかでも旅の場面は好んでとりあげられた。ポライウオロ《トビアとラファエル》(1465)では,旅装のトビアが手に魚をさげ,ラファエルに手をひかれて歩む。また,ラファエルが最後に姿をあらわしてトビアらのもとを去る場面を描いたレンブラントの作品(1637)も有名である。
執筆者:浅野 和生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報