改訂新版 世界大百科事典 「トビト書」の意味・わかりやすい解説
トビト書 (トビトしょ)
Book of Tobit
旧約聖書外典中の一書。童話的モティーフを取り入れた伝記的物語。捕囚民としてニネベに住むユダヤ人トビトTobitは,放置されていた同胞の死体を葬った夜,スズメの糞が目に入り失明,逆境を悲しんで死を願う。同じころ親族の娘サラも神に死を祈り求め,二人を救うべく天使ラファエルが遣わされる。トビトの息子トビアはラファエルに助けられてメディアの親族から父の貸金を取り戻す途中,サラと結婚し,新妻とともに帰国後,往路入手した魚の胆汁を塗って父の失明をいやす。律法,とくに,施し,同族結婚,死者の尊重が強調されている。エジプトの《感謝せる死者の話》《アヒカル物語》《コンスの書》から素材を借用したものとされる。
執筆者:土岐 健治
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報