ポライウオロ(英語表記)Antonio del Pollaiuolo(Pollaiolo)

改訂新版 世界大百科事典 「ポライウオロ」の意味・わかりやすい解説

ポライウオロ
Antonio del Pollaiuolo(Pollaiolo)
生没年:1432ころ-98

イタリアの彫刻家,金工家,画家。弟ピエロPiero del Pollaiuolo(1441ころ-96)とともに生地フィレンツェで,きわめて繁盛した工房を営み,彫刻,絵画,金属工芸品,版画などを制作。アントニオはブロンズ彫刻をはじめとする金工を最も得意とし,ピエロはもっぱら画家であった。ピエロは兄に比べて明らかに独創性において劣り,彼のみの手になるとされる《七徳擬人像》(1470。うち1点はS. ボッティチェリ作)は,力強さの欠けた凡庸作品となっている。アントニオを主導者として兄弟で共作したとされる《セバスティアヌス殉教》(1475)は,解剖学的に正確な人体表現と,遠近法的風景表現という,ポライウオロ工房の二つの探究をはっきりと示す。アントニオはレオナルド・ダ・ビンチに先がけて,人体表現の正確さを得るために人体解剖を行ったといわれ,その成果は署名入りの版画《裸体の男たちの戦い》や,ブロンズ彫刻《ヘラクレスアンタイオス》にはっきりと示されている。またアントニオは陰影を用いず線のみによって人体の構造と運動を表現する優れた素描家であり,銅版画におけるハッチング(線影)の施し方の面においても,次代手本となる技術を示している。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ポライウオロ」の意味・わかりやすい解説

ポライウオロ
Pollaiuolo, Antonio

[生]1429/1430
[没]1498
イタリア,フィレンツェ派の金工家,彫刻家,画家。ドナテロとカスターニョの弟子で,バルドビネッティの影響も強い。金工家として出発し,のち青銅彫刻を学び,1460年頃から弟ピエロ (1443~98) とともに絵画活動も始める。絵は,初めカスターニョの影響による印刻的な線描表現をしていたが,ガリーナ・ビラの壁画『踊る裸人』を描いた頃から,人体に対する解剖学的関心と古代芸術への興味を示しはじめ,その後の『アンタイオスと戦うヘラクレス』 (ウフィツィ美術館) ,と『ヒドラと戦うヘラクレス』 (同) では,深い解剖学知識を駆使して激しい動きと複雑な姿態を迫真的に描写。『ダビデ』 (ベルリン国立美術館) のような優雅な姿態描出や『婦人横顔像』 (ミラノ,ポルディ・ペッツォーリ美術館) の洗練された線の手法も持合せていた。さらに,『聖セバスチアヌスの殉教』 (ロンドン,ナショナル・ギャラリー) ,『アポロンとダフネ』 (同) の背景にみられるように,自然の実感に即した新鮮な風景描写もよくした。彫刻においても,『アンタイオスと戦うヘラクレス』 (バルジェロ国立美術館) のような自然主義的作品があるが,さらにローマで,弟ピエロも参加して制作した教皇シクスツス4世とインノケンチウス8世の両墓碑は,青銅技術の非常な多様性で墓碑構成に新境地を開いた。

ポライウオロ
Pollaiuolo, Piero

[生]1443頃.フィレンツェ
[没]1496. ローマ
イタリアの画家。彫刻家アントニオの弟で,A.バルドビネッティの弟子と思われる。作品はサン・ジミニャーノのサンタゴスティーノ聖堂の『聖母の戴冠』 (1483) ,フィレンツェのウフィツィ美術館の『七美徳寓意像』 (69~90) などがある。

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百科事典マイペディア 「ポライウオロ」の意味・わかりやすい解説

ポライウオロ[兄弟]【ポライウオロ】

イタリア・ルネサンスの芸術家兄弟。初め生地フィレンツェ,のちローマに工房を構え,絵画,彫刻,金工の分野で活躍した。兄のアントニオAntonio〔1432ころ-1498〕は《教皇インノケンティウス8世墓碑》(1492年―1498年)などの墓廟彫刻や《ヘラクレスとアンタイオス》(1465年―1475年ころ,フィレンツェ,バルジェロ美術館蔵)などの人像彫刻を手がけ,画家としては神話画,宗教画を得意とした。特に解剖学的にきわめて正確で,動感豊かな裸体の描写で知られる。絵画の代表作に《聖セバスティアヌスの殉教》(1475年ころ,ロンドン,ナショナル・ギャラリー蔵)などがある。弟のピエロPiero〔1441ころ-1496〕は,技術的・芸術的に兄に劣り,ほとんど常に兄の助手として働いた。
→関連項目シニョレリドメニコ・ベネツィアーノボッティチェリ

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世界大百科事典(旧版)内のポライウオロの言及

【工房】より

… 工房は第1に親方個人の仕事場であるが,歴史的に重要なのは,親方の指揮下に職人・徒弟が行う共同制作である。共同制作の場としての工房では,とりわけ15世紀イタリアの場合,美術工芸の各分野にわたる多面的活動がなされることが珍しくなく(例えば,15世紀後半のフィレンツェで繁栄したポライウオロ兄弟の工房では,絵画,彫刻,金属工芸,版画などが手がけられた),親方は多少とも〈万能人〉であることが要求された。また,親方の構想・指導のもとに作品制作の分業化が行われることも多く,下準備はもちろん,背景,衣装,小道具などを,助手や弟子が力量に応じて担当した。…

※「ポライウオロ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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