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トリクルダウン理論 とりくるだうんりろん trickle-down theory

翻訳|trickle-down theory

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知恵蔵miniの解説

トリクルダウン理論

経済学の理論の一つで、「富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)する」との考えを主軸とする。1714年に刊行されたイギリス精神科医思想家であるバーナード・デ・マンデヴィルの主著『The Fables of the Bees: or, Private Vices, Public Benefits』(邦題『蜂の寓話―私悪すなわち公益』、法政大学出版局)がこの考え方を示した最初のものとされる。国家や経済界などマクロレベルでの富の拡大が貧困改善につながることは立証されていないため「トリクルダウン仮説」とも呼ばれる。「富裕層の所得が高まるだけ」「先進国には通用しない」「富が下から上へ流れる状況を想定できなかった時代の理論」など、批判も多い。

(2013-6-7)

出典|(株)朝日新聞出版発行
(C)Asahi Shimbun Pubications Inc
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知恵蔵2015の解説

トリクルダウン理論

トリクルとは、英語で水などがちょろちょろ漏れ出るの意。富裕層が潤い社会全体の富が増大すれば、富は貧困層にもこぼれ落ち、経済全体が良い方向に進むとする経済理論。その本質的なスタンスから「おこぼれ経済」とも言いなされ、現実的裏付けや社会科学的な立証はなされていない。
この説が最初に注目されたのは、18世紀の英国の思想家で精神科医のマンデビルの著した『蜂の寓話』(1714年刊)からである。作中、蜂は巣の中で醜い私欲にまみれて葛藤するに過ぎないが、巣全体はその結果として豊かで富んだ社会となると考察した。こうした概念がアダム・スミスなどの古典派経済学を経て、ケインズらの近代経済学にも示唆を与えた。ただし、経済市場での需要(有効需要)に着目し政府が公共事業を増やすなどして、財政・金融的に介入する政策(総需要管理政策)に重きを置くケインズのマクロ経済学では、トリクルダウン理論の部分はほとんど棄却されている。その一方で、供給側に着目する経済学派の中では、供給されたものはいつかは消費され需要を生み出すという仮説に基づいて、投資や供給力が拡大すれば経済成長が期待できるという論調もあり、この側面としてトリクルダウン理論が残っていた。
1980年代にケインズ政策のほころびが大きくなる中で、米共和党レーガン政権が採用した経済政策では、後者の学説が色濃く反映され、トリクルダウン理論も強く主張されたが奏功しなかった。トリクルダウン理論が想定するような状況は、開発途上国経済発展などの限られた局面では一定の有効性が考えられる。しかし、大衆消費が充実した大規模な経済市場では、経済成長についての有効性は低く、社会格差を拡大するだけだとの批判が強い。
アベノミクスでは、緩やかインフレを促そうとするリフレ政策が基調となっている。この中で進められる金融緩和消費税増税と大企業の法人税抑制、所得税の累進緩和などが、トリクルダウン理論の亡霊の再現ではないかと危惧する論者もいる。こうした話題から「トリクルダウン」は2014年のユーキャン新語・流行語大賞の候補にノミネートされた。

(金谷俊秀 ライター/2014年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

トリクルダウン理論
とりくるだうんりろん
trickle-down theory

富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透するという考え方。トリクルダウン効果(仮説)ともいう。大企業や富裕層への税の優遇、大型の公共投資などが経済活動を活性化させ、めぐりめぐって低所得層も豊かになり、社会全体の利益になるという政治的な主張である。トリクルダウンは英語で「徐々に滴り落ちる」という意味で、より日本語の感覚に近い言葉に直すと「おこぼれ」となる。アメリカでは共和党右派などの新自由主義者が主張、富裕層への増税に反対し、生活保護医療保険をはじめとする社会福祉政策に対しても消極的な立場をとっている。
 1980年代に中国を率いた小平(とうしょうへい)が提唱して推し進めた「一部の人、一部の地域が先に豊かになれば、最後には共に豊かになる」という共同富裕論は、この典型例とされている。また、第二次世界大戦後の日本で行われた、エネルギーや素材分野の設備投資に資金を集中させる「傾斜生産方式」による一部産業への優遇策を一種のトリクルダウン理論を用いた政策とみて、それが後の経済成長を支え、国民全体の所得を引き上げたとする説がある。しかし、経済構造が複雑化している現状では、この政策をとることにより貧富の格差がいっそう拡大し、社会不安が増すケースが多く、説得力を欠いた主張とする見方が多い。[編集部]

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