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新自由主義 しんじゆうしゅぎ

大辞林 第三版の解説

しんじゆうしゅぎ【新自由主義】

政府の積極的な民間介入に反対するとともに、古典的なレッセ-フェール(自由放任主義)をも排し、資本主義下の自由競争秩序を重んじる立場および考え方。ネオ-リベラリズム。

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知恵蔵の解説

新自由主義

政府の規制を緩和・撤廃して民間の自由な活力に任せ成長を促そうとする経済政策。債務危機の解決をめぐって国際通貨基金(IMF)など国際金融機関が融資の条件として債務国に採用を求めたこともあって、急速に中南米各国に広まった。緊縮財政外資導入国営企業民営化リストラのほか、公共料金の値上げや補助金カットなどを進めるため、貧困層の生活を直撃し国民の反発が強い。ベネズエラ大統領選でのチャベス政権誕生やエクアドル政変、アルゼンチンボリビアでの暴動など、新自由主義への反対を掲げた市民の動きが目立ち、南米の左派政権誕生の原因となった。

(伊藤千尋 朝日新聞記者 / 2007年)

新自由主義

20世紀の小さな政府論を新自由主義と呼ぶ。18世紀イギリスの思想家、アダム・スミスは『国富論』で、経済は個人や企業の自由に任せることによって繁栄すると主張し、政府の役割を治安維持や防衛などに限定する必要を説いた。その後20世紀に入ると、大恐慌や戦時動員体制の経験を経て、政府が完全雇用を目指して需要を管理するケインズ主義政策が一般的となった。しかし、1980年代に入って政府における財政赤字の深刻な累積、官僚主義的な非能率などが大きな問題となり、イギリスのサッチャー政権、アメリカのレーガン政権を皮切りに、減税、規制緩和、民営化を軸とする小さな政府への改革が広まった。日本でも80年代の第2次臨時行政調査会による行政改革以来、新自由主義的な政策転換が進められてきた。ただ、日本では公共事業や規制に関して既得権を持つ官僚組織、利益団体、族議員が、小さな政府の徹底に反対してきた。つまり、日本の場合、保守の自民党の中に小さな政府と大きな政府という相対立する思想が同居しており、政策が円滑に決定されない。「官から民へ」というスローガンを唱えて登場した小泉政権も、新自由主義改革を推進するために、党内の抵抗勢力との間で複雑な駆け引きを繰り返してきた。結果的には、郵政民営化や社会保障費の抑制など新自由主義的政策が小泉政権の遺産となった。

(山口二郎 北海道大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

デジタル大辞泉の解説

しん‐じゆうしゅぎ〔‐ジイウシユギ〕【新自由主義】

政府などによる規制の最小化と、自由競争を重んじる考え方。規制や過度な社会保障福祉富の再分配は政府の肥大化をまねき、企業や個人の自由な経済活動を妨げると批判。市場での自由競争により、富が増大し、社会全体に行き渡るとする。ネオリベラリズム。→リバタリアニズム
[補説]大企業や資産家などがより富裕化することを是認し、それらによる投資や消費により中間層・貧困層の所得も引き上げられ、富が再配分されるとする。しかし、再配分よりも富の集中や蓄積・世襲化が進み、貧富の差を広げるという見方もある。

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百科事典マイペディアの解説

新自由主義【しんじゆうしゅぎ】

政府の財政政策による経済への介入を批判し,市場の自由競争によって経済の効率化と発展を実現しようとする思想。ネオリベラリズムともいう。経済理論としては,ケインズ学派有効需要政策を批判し,政府は市場経済への介入を抑制すべきとするF.ハイエクやM.フリードマンの理論に基づく。

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世界大百科事典 第2版の解説

しんじゆうしゅぎ【新自由主義 neo liberalism】

自由主義が経済過程への国家干渉の極少化を唱えた点は,産業化に伴う社会問題の発生以来さまざまな批判を浴び,自由主義国家もしだいに自由放任政策を放棄した。このような条件の変化に応じて自由主義を再解釈する試みを新自由主義という場合がある。T.H.グリーン資本主義の生む不平等の下に真の契約の自由はありえないとして,労働者の立場を強化するために国家の積極的な政策が不可欠であると説いた。ルソーヘーゲルを援用する彼の新理想主義は,自由の実現のために国家の果たすべき積極的役割を示して,イギリス自由主義に新たな展開をもたらした。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

新自由主義
しんじゆうしゅぎ
neo-liberalism

1980年代以降に世界的に支配的となった経済思想・政策の潮流。1960年代の末から70年代にかけて、ドル・ショック(アメリカの経済的衰退を明確にしたドルの金兌換中止)、オイル・ショック、激化する労働運動、そして低成長下のインフレーションなど、第二次世界大戦後、高成長を維持してきた先進国の資本主義は大きな危機にみまわれた。その際、その高成長を支える思想体系としてのケインズ主義(市場を自由放任にするのではなく、政府が積極的に介入する)にとってかわる危機の解決として現れ、80年代から資本主導のグローバリゼーションのイデオロギー、実践的な知として支配的潮流の座についたのが新自由主義である。その源流にはフリードリヒ・ハイエク、シカゴ学派のミルトン・フリードマンといった経済学者がいる。
 そもそも自由主義は、いわゆる「自由放任主義」としてイメージされるような、市場の論理を制約する一切をただただ退ける消極的な議論ではない。18世紀にデビッド・ヒューム、アダム・スミスらによって提起された古典的自由主義は、それまでの絶対王政や重商主義に取ってかわり、国家ではなく、市場を介してみずからの利益を理性的に追求する諸個人からなる自律的な社会の運動法則から出発する統治の技法を提案する実践的な知でもあった。絶対王政を支えた国家理性の教義が、統治能力の向上と国家の肥大とを密接に結びつけていたとすれば、自由主義は統治能力の向上のためには国家はむしろ介入の領域をみずから制約しなければならない、と発想の転換を促したのである。
 新自由主義は古典的自由主義と同じく、実践的な知である。たとえば、古典的自由主義は、絶対王政の「過剰統治」と国家の肥大化を批判し、「神の手」によって運営される市場の論理にもとづく市民社会の自律性をうたいながら登場したが、新自由主義はケインズ主義的福祉国家の所得再分配政策などがもたらす「過剰統治」と国家の肥大化こそがシステムの機能不全の原因として、規制緩和、福祉削減、緊縮財政、自己責任などを旗印に台頭した。その場合、古典的自由主義とは区別される新自由主義の特徴は、独特の保守的側面と「ラディカル」ともいえる徹底した側面にある。すなわち前者が絶対的な国家秩序を批判しつつ啓蒙主義的勢力として現れたのとは対照的に、新自由主義は新保守主義と手をたずさえながら、家族の価値のような保守的道徳観の復活、治安の強化、マイノリティの権利の削減、排他的ナショナリズムといった強い国家の再編成を促す傾向にある一方で、従来は市場の論理にはなじまないとされてきた領域――たとえば公教育、福祉、犯罪政策など――にまで、その論理を拡大する徹底した傾向をもつ。
 こうした新自由主義による改革の効果は、アメリカのように一部の先進国の経済成長に資した部分もあったが、企業権力の肥大化、南北間のみならず一国内での貧富の格差の拡大、弱肉強食イデオロギーの浸透による市民の連帯意識の衰退といった負の効果ももたらし、90年代以降は「第三の道」と呼ばれるヨーロッパでの社会民主主義勢力や、アンチ・グローバリゼーションの運動など、さまざまなレベルで新自由主義にかわる社会のあり方が模索されている。[酒井隆史]
『ミルトン・フリードマン、ローズ・フリードマン著、西山千明訳『選択の自由――自立社会への挑戦』(1980・日本経済新聞社) ▽アンドルー・ギャンブル著、小笠原欣幸訳『自由経済と強い国家』(1990・みすず書房) ▽フリードリヒ・ハイエク著、一谷藤一郎・一谷映理子訳『隷従への道』(1992・東京創元社) ▽スーザン・ジョージ著、毛利良一・幾島幸子訳『グローバル市場経済生き残り戦略』(2000・朝日新聞社)』

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