ドナンの膜平衡(読み)ドナンのまくへいこう(英語表記)Donnan's membrane equilibrium

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ドナンの膜平衡」の意味・わかりやすい解説

ドナンの膜平衡
ドナンのまくへいこう
Donnan's membrane equilibrium

2種の電解質溶液が,ある種のイオンに対して透過性をもたない半透膜によってへだてられているときに,膜の両側でのイオン濃度に差があるまま化学平衡に達すること。 1911年 F.ドナンによって詳細に研究された。たとえば,蛋白質は通過できず,ナトリウムイオン,塩化物イオンは自由に通過できる膜の一方の側 (A側) に電荷を中和するのに必要なだけのナトリウムイオンを含む蛋白質溶液を入れ,反対の側 (B側) に食塩水を入れておくと,(Na+)A/(Na+)B=(Cl-)B/(Cl-)A となり,平衡に達する。この場合,ナトリウムイオンは蛋白質の電荷を中和するため,A側で濃度が高くなり,塩化物イオンはB側で濃度が高くなっている。このような現象は一般に高分子電解質と低分子電解質との間で起り,生物細胞膜やイオン交換樹脂膜の作用にもみられる。

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改訂新版 世界大百科事典 「ドナンの膜平衡」の意味・わかりやすい解説

ドナンの膜平衡 (ドナンのまくへいこう)

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化学辞典 第2版 「ドナンの膜平衡」の解説

ドナンの膜平衡
ドナンノマクヘイコウ
Donnan's membrane equilibrium

[同義異語]膜平衡

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栄養・生化学辞典 「ドナンの膜平衡」の解説

ドナンの膜平衡

 →ギブス-ドナン膜平衡

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世界大百科事典(旧版)内のドナンの膜平衡の言及

【膜平衡】より

…膜で仕切られた電解質溶液の一方に膜を透過できないイオン(固定イオン,コロイドイオンなど)を含むとき,そのイオンの存在によって膜の両側における他のイオンの分布は影響をうけ,電気的中性の条件を満たすように,膜の両側でイオンの不均一分布をとって平衡に達する。これを膜平衡と呼び,その熱力学的理論は,1911年ドイツのドナンFrederick George Donnan(1870‐1956)により与えられたので,ドナンの膜平衡ともいう。たとえば,高濃度の固定イオンをもつイオン交換樹脂が塩溶液中にあるとき,樹脂は固定イオンを通さない仮想的な膜で囲まれているとみなすことができるので,この系のイオン交換平衡を膜平衡として取り扱うことができる。…

※「ドナンの膜平衡」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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