溶液中に張られた膜が,ある大きさ(分子径あるいは分子量)以下の粒子(分子,イオンなど)のみを通し,それ以上の粒子を通さないとき,膜は半透性を示すといい,このような膜を半透膜という。多孔性の膜は,主として膜自身の孔径により支配される半透性を示すが,とくにほぼ一定の孔径をもつ膜では,透過できる溶質の大きさの範囲が明確に定まるので,このような膜は大きさによる物質分離の方法として利用できる。以前には,フェロシアン化銅の沈殿膜やコロジオン膜のほかパーチメント紙や膀胱膜などが用いられたが,高分子化学の発展とともに再生セルロース(セロハン),アセチルセルロースなどや,ポリアクリロニトリル,ポリスルホンなどの合成高分子膜で,種々の孔径をもつものがつくられ,透析,ろ過,限外ろ過などによる分離・精製の目的に広く使われている。非透過性の溶質を含む溶液と純溶媒を半透膜で仕切ると,溶媒分子が半透膜を通って溶液側に移動(浸透)し,膜を隔てて浸透圧が生じる。浸透圧は溶液のモル濃度によるので,これから溶質の分子量が求められる。溶媒分子のみを通し,溶質分子を完全に通さない理想的半透膜の概念は,19世紀の後半,J.H.ファント・ホフが熱力学に基礎をおく溶液の物理化学を築くとき,非常に重要な役割を演じた。
執筆者:妹尾 学
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
気体の混合物や溶液、コロイド分散系などにおいて、成分の一部のみを透過させるが、他の成分の通過が不可能な膜をいう。理想的半透膜が熱力学においてよく仮定されるが、混合気体や溶液の中で、特定の成分のみ完全に通過させ、他の成分は完全に遮断できるようなものである。
フェロシアン化銅を素焼の細孔中に沈着させてつくった半透膜は、水は通過させるがほとんどのイオンは通過できない。セロファンや硫酸紙、膀胱(ぼうこう)膜になると、低分子の溶質やイオンは通過させるがコロイド粒子を通さない膜であるから、透析などに利用される。生体中のいろいろな膜も、それぞれに特徴ある半透膜としての性質を示す。半透膜を境として濃度の異なる溶液を接触させると、濃度の高いほうへと溶媒が移動する。
[山崎 昶]
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
ある溶液とその溶媒,あるいは濃度の異なる溶液間で,溶質濃度のより小さいほうから大きいほうへ,溶媒のみが自発的に移動することが可能な隔膜をいい,動物の膀胱膜,ヘキサシアノ鉄(Ⅱ)酸銅(Ⅱ)(フェロシアン化銅)などが用いられる.[別用語参照]沈殿膜
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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