日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
バール(Jean Wahl)
ばーる
Jean Wahl
(1888―1974)
フランスの哲学者。マルセイユに生まれる。第二次世界大戦中ドイツ軍によって逮捕、投獄されたが、脱出してアメリカへ渡る。終戦とともに帰国、パリ大学教授に復職。1930年代からキルケゴールをはじめとする実存哲学者の思想に関する研究書を多く著しているが、サルトルなどの実存主義者とは一線を画した。たとえば『形而上(けいじじょう)学的経験』(1965)のような「経験」についての現象学的記述を試みた研究書や、大著『形而上学概論』(1953)を著している。また詩集も出しており、詩人哲学者とよばれるべき風格をも備えていた。
[西村嘉彦 2015年6月17日]
『松浪信三郎・高橋允昭訳『実存主義入門』(1962・理想社)』▽『久重忠夫訳『形而上学的経験』(1977・理想社)』▽『岡田松夫著『ジャン・ヴァール』(澤瀉久敬編『現代フランス哲学』所収・1968・雄渾社)』