パントゥン(その他表記)pantun

改訂新版 世界大百科事典 「パントゥン」の意味・わかりやすい解説

パントゥン
pantun

伝統的なマレー語の四行詩。その特色は1行目と3行目,2行目と4行目がそれぞれ脚韻をふむことである。前半2行と後半2行の関係について,前半2行は後半2行の主題を導く暗喩であるという説と,関係がないという説がある。いずれにしても重要なのは主題を詠んだ後半2行で,主題は恋,感謝風刺忠告などさまざまである。パントゥンはマレー人の精神世界を理解するうえで重要であるが,本来口誦されるものであるから,その理解にはマレー語の美しさへの共感が必要であり,歴史,文学に関する深い知識と花,植物,鳥,魚などの日常生活で使われるマレー語が秘める暗喩に精通することが要求される。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「パントゥン」の意味・わかりやすい解説

パントゥン
Pantun

マレーの民族的な四行詩。前句2行と後句2行 (各行4語が普通) から成り,第1行と第3行,第2行と第4行の脚韻をそろえる。内容的には,「いずこより山鳩舞いて,沢より稲へ下り来ぬ/いずこよりかの恋心,目より心へ下り来ぬ」 (斎藤正雄訳) のように,前句で自然の景物をうたい,後句で詩の主題である恋心などをうたう。前後の句の関係は,上記の例のように,「そのように」である場合が多いが,「それにもかかわらず」とか,さらに謎めいた暗示である場合も少くない。

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世界大百科事典(旧版)内のパントゥンの言及

【インドネシア】より


[スマトラ]
 一般に13世紀以降の西アジア音楽文化の影響が顕著で,器楽より声楽の方が優位にあるといえる。マレー語の韻文による年代記ヒカヤットや散文詩パントゥンが,サルアン(笛)やルバーブ(弦楽器)の伴奏で舞踊を伴って歌い語られる。詩の朗唱はイスラム社会において,大きな精神的影響,ときには政治的な影響をももつ。…

【スンダ族】より

…建築用の資材に大きな鋸を使うこと,隣近所より大きな家を建てること,家屋や壁に石灰を塗ること,瓦で屋根を葺くこと,ガラスを用いた戸や窓をもつこと,絵や彫刻などで壁を飾ること,金やダイヤモンドの装飾品を身につけること,などである。スンダ地域は文学が豊かなところで,韻文形式のパントゥンは有名であり,またワワチャンというイスラムにちなんだ物語が吟誦朗読される。影絵芝居ワヤンの人形はスンダ族では木製である。…

【マレーシア】より

…(9)ハドラー アラブ系の宗教音楽(ムハンマド(マホメット)賛歌)。(10)パントゥン。これらの多彩な芸能を支える楽器も多様で,インドネシアやアラブに由来する太鼓や笛,弓奏楽器のほかに西洋楽器なども用いられる。…

※「パントゥン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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