フタバスズキリュウ (双葉鈴木竜)
爬虫綱の鰭竜(きりゆう)目Sauropterygiaに属する蛇頸竜(だけいりゆう)または長頸竜,俗に首長竜と呼ばれるものの1種。1968年に高校生の鈴木直が発見した。場所は福島県いわき市久之浜町を流れる大久川岸の露頭で,白亜紀後期の双葉層群と呼ばれる地層中である。国立科学博物館の長谷川善和,小畠郁生らが2年間に十数回発掘を行い,1個体に属する骨格を得た。室内作業には5年を要した。頭骨,胸骨,骨盤など重要な部分があり,骨格復元が可能であった。体長は7m,前肢の幅員約3m。首は長く約3m,胴体は体の後半部に位置する。頭骨は比較的低く,小さい。歯は円錐形で,弱いが明瞭な縦の条線が発達する単尖歯である。胃の部分には数十個の胃石が共産した。肩と胴椎の棘(きよく)突起の先端にサメの歯の先端が突きささっており,4本のひれあしの周辺からは100個近い歯が産出した。浅海の水面近くを遊泳し,魚やタコやイカなどを食べていたと思われる。フタバスズキリュウはアジア地域で発見された最も完全な首長竜であるが,断片的な化石は北海道各地の上部白亜系の地層から産出。学名は未記載。
執筆者:長谷川 善和
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知恵蔵
「フタバスズキリュウ」の解説
フタバスズキリュウ
約8500万年前の大型海生は虫類の首長竜化石の1つ。1968年に福島県いわき市大久川河岸の白亜系双葉層群で見つかり、2006年、佐藤たまき、長谷川善和、真鍋真により英国古生物学会誌に記載され、新種として学名が有効となった。主要な特徴は(1)目と外鼻孔が前後に離れている、(2)上腕骨が大腿骨と比し特に長く頑丈、(3)鎖骨と間鎖骨の癒合体の形状が独特、(4)同時代のエラスモサウルス類にしては橈(とう)骨・尺骨や脛(けい)骨・腓(ひ)骨が比較的長い。推定全長6〜9m。発見したのは当時高校生の鈴木直で、脊椎骨・肋骨など数点を発見。さらに長谷川善和、小畠郁生が発掘・研究し、骨格のレプリカが展示された。化石として保存されていたのは骨格のうち約70%。系統進化や古生物地理の資料として貴重。国立科学博物館のほかいわき市石炭・化石館などにレプリカが展示されている。
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「フタバスズキリュウ」の意味・わかりやすい解説
フタバスズキリュウ(双葉鈴木竜)【フタバスズキリュウ】
1968年福島県いわき市板木沢の双葉層群(白亜紀後期)から発見された首長竜の一種。長い首をもち,四肢はひれ状となり,水中生活をしていた。発見地と発見者鈴木直(当時高校生)に因んで命名。化石はほぼ全身がみつかり,全長は約7m。
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世界大百科事典(旧版)内のフタバスズキリュウの言及
【首長竜】より
… 福島県および北海道などから白亜紀の首長竜化石が何種類か産出している。とくに福島県いわき市から発見された[フタバスズキリュウ]は環太平洋のアジア側から産出した最良の標本として注目されている。【長谷川 善和】。…
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