日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
フランチャイズ・システム
ふらんちゃいずしすてむ
franchise system
商品やサービスについて特徴をもつ企業が、チェーンに加盟する独立店に対し、一定地域内において当該商品・サービスの独占販売権を与え、経営の方法も指導するかわりに、看板料や指導料を徴収するシステム。フランチャイズとは、特定の地点で何かをする自由あるいは権利を意味する。フランチャイズ・システムの場合、フランチャイズを与える側の企業をフランチャイザー、与えられる側をフランチャイジーとよぶ。加盟する場合、フランチャイザーが一方的に定めた定型的契約を結ぶことになる。契約の内容には、権利(商標・商号の使用、事業経営のノウハウ、営業場所と対象地域、指導援助など)、代価(看板料、指導料など)とその支払方法、加盟店の義務、契約終了の条件などが含まれている。
このシステムによって、フランチャイザー側は、限られた人材・資金で急速な販路の拡張や事業の拡大ができる。フランチャイジーにとっては、すでに開発されたノウハウや事業・商品・サービスの知名度を利用することができるので、不十分な資金や経営能力でも、一般的に不安定な創業期を無事過ごし、経営の継続ができる。また独立の経営者としての地位も保つことができる。このような両者のメリットは、一つの本部と多数の加盟店とが契約することによって、大きくなる。チェーン展開がこのシステムの一般的形態となる。
フランチャイズ・システムは、アメリカでは19世紀なかばに大手ミシン・メーカーが、1900年ごろには自動車メーカーと石油精製業者が採用し、1950年代以後、多くの業界で広まった。日本には昭和30年代に導入され、40年代後半から多くの業種で活発に導入されるようになった。小売業がもっとも多く、それに加え、外食業・サービス業のチェーン数が年を追って増えており、2019年(平成31)4月~2020年(令和2)3月時点の日本国内のフランチャイズ・チェーン数は1324、店舗数は26万余店に及んでいる。しかし以前は、契約観念の乏しさ、契約内容の説明の不十分さ、誇大宣伝などが原因で、契約後のトラブル発生が少なくなかった。そこで、1973年(昭和48)に制定された中小小売商業振興法(昭和48年法律第101号)は、フランチャイザーに対し加盟希望者へ契約内容を開示することを義務づけている。
[伊藤公一]
『白土健・岸田弘著『フランチャイズ・ビジネス概論』(2009・創成社)』▽『内川昭比古著『フランチャイズ・ビジネスの実際』(日経文庫)』