改訂新版 世界大百科事典 「ブラウンセカール症候群」の意味・わかりやすい解説
ブラウン・セカール症候群 (ブラウンセカールしょうこうぐん)
Brown-Séquard's syndrome
脊髄の半側が障害されたとき,特有のパターンの知覚異常と運動麻痺を生ずるものをいう。病名は動物の脊髄半側切断に関するブラウン・セカールの研究にちなんでつけられた。この症候群では病変のあるレベル以下において,病変と同側では運動麻痺,深部知覚障害および一部の触覚障害が起こり,反対側では温度覚,痛覚の障害と軽い触覚障害が生ずる。脊髄内には,知覚を伝える神経繊維が脊髄後根から入って上行し,運動をつかさどる神経繊維(この神経路を錐体路という)が下行している。知覚の神経繊維のうち,振動覚,位置覚などの深部知覚と触覚の一部を伝えるものは,脊髄に入ると同側の後索を上行する。一方,温度覚,痛覚と触覚の一部を伝えるものは,脊髄に入ると交差して反対側を上行する。また錐体路は脊髄内では交差せずに下行し,同側の運動を支配する。このため脊髄の半側障害では上記のような特有のパターンの障害を呈するのである。原因としては脊髄外傷,脊髄腫瘍,ときに脊髄血管障害などがある。
→知覚異常
執筆者:楠 進
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報