脊髄血管障害(読み)せきずいけっかんしょうがい(英語表記)Vascular Diseases of the Spinal Cord

家庭医学館 「脊髄血管障害」の解説

せきずいけっかんしょうがい【脊髄血管障害 Vascular Diseases of the Spinal Cord】

[どんな病気か]
 脊髄に血液を供給している血管の動脈硬化(どうみゃくこうか)や血管の形態異常のために梗塞(こうそく)(血管内がつまる)や出血などがおこり、脊髄を障害する病気で、前脊髄動脈症候群(ぜんせきずいどうみゃくしょうこうぐん)と脊髄動静脈奇形(せきずいどうじょうみゃくきけい)がおもなものです。
■前脊髄動脈症候群
 脊髄横断面の前方3分の2を灌流(かんりゅう)する前脊髄動脈の梗塞でおこる病気です。
●症状
 梗塞をおこしたレベルにほぼ一致する背中の痛みで始まり、ついで、対(つい)まひ(両下肢(りょうかし)のまひ)または四肢(しし)まひ、障害部位より下の解離性(かいりせい)感覚障害、膀胱直腸障害(ぼうこうちょくちょうしょうがい)(大小便の失禁(しっきん))などがおこります。解離性感覚障害とは、触覚と深部覚(手足の位置や動きなどの感覚)はほぼ正常なのですが、熱さ・冷たさ・痛さを感じる感覚が低下している状態をいいます。近年、脊髄のMRI検査で診断できるようになりました。
●治療
 とこずれや尿路感染症(にょうろかんせんしょう)の予防と治療、起立歩行のためのリハビリテーションが行なわれます。
■脊髄動静脈奇形(脊髄動静脈血管腫(せきずいどうじょうみゃくけっかんしゅ))
 脊髄の血管に動静脈奇形が存在するためにおこる脊髄障害です。
 下部胸髄(きょうずい)から腰髄(ようずい)にかけての背中側におこりやすいものです。
●症状
 初発症状は下肢(かし)(脚(あし))痛または背部痛で、ついで両下肢の脱力、間欠性跛行(かんけつせいはこう)(足が痛くて跛行になるが、休むと痛みが消えてふつうに歩ける)、膀胱直腸障害などがおこります。
 突然、症状の出現するもの、運動・飲酒・月経(げっけい)・妊娠(にんしん)などで一時的に症状が悪化するもの、対(つい)まひや感覚障害が徐々に進行するものなどがあります。脊髄造影(ミエログラフィー)で「ミミズ」様の陰影欠損(いんえいけっそん)を示すのが特徴で、脊髄血管撮影で診断できます。
●治療
 顕微鏡手術(マイクロサージェリー)で異常血管を摘除します。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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