日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブリッジウォーター運河」の意味・わかりやすい解説
ブリッジウォーター運河
ぶりっじうぉーたーうんが
Bridgewater Canal
イギリスの艀(はしけ)用運河。マージー河口に位置しマンチェスター・シップ運河に臨むランコーンとマンチェスターを結ぶ。長さ約46キロメートル(支線区間を除く)。閘門(こうもん)数10。長さ21.3メートル、幅4.6メートル、喫水1.2メートル以下の船が通航できる。イギリス産業革命の高揚期に港湾都市リバプールと内陸の工業都市マンチェスターとの間の交通手段改善のため、ブリッジウォーター公爵フランシス・エガートンにより企画され、土木技師ジェームズ・ブリンドリーJames Brindley(1716―1772)の設計と監督によって1776年までに主要な区間が開通した。この運河の開通はイギリスにおける運河時代の幕開きとなり、イングランド中南部の運河網を発達させる第一歩をしるした意味で、イギリス産業革命史上、重要な転機であった。
運河はブリッジウォーター運河会社によって経営され、1830年のリバプール・アンド・マンチェスター鉄道の開業まで、両都市間の商品輸送のメインルートとして繁栄した。1894年にこの運河に並行する海洋運河がマンチェスターシップ運河会社によって開業し、ブリッジウォーター運河も同社に引き継がれた。1948年の運河国有化に際しても、同運河はマンチェスターシップ運河会社の所有のまま存続し、艀とクルージングボート用水路として用いられている。この運河と北方のリーズ・アンド・リバプール運河を連絡するストレットフォード・アンド・リー支線(17.3キロメートル)がマンチェスター・シップ運河とオーバークロスする地点にはバートン水路橋が設けられ、シップ運河に船が通るときは中央部を軸として90度回転する構造となっている。
[青木栄一・青木 亮]