所有(読み)ショユウ

デジタル大辞泉 「所有」の意味・読み・例文・類語

しょ‐ゆう〔‐イウ〕【所有】

[名](スル)自分のものとして持っていること。また、そのもの。「多大な財産を所有する」「父の所有する土地」
[用法]所有・所持所蔵――「田中氏所有(所持・所蔵)の古写本」など、単に持つ意では相通じて用いられる。◇「彼は山林を所有している」「これが私の所有するカメラです」のように、大小にかかわらず、自分の物として持っていることが「所有」である。多く財産的な価値のある物についていい、「高級車を所有している」とはいえても、「菓子を一袋所有している」などとはいいにくい。◇「所持」は一般には身につけて持っていることか、どこかに保管していることで、「所持品を検査する」「盗品所持の罪」などという。◇「所蔵」は所有する物を大切にしまいこんでいることで、「彼は国宝級の名画を所蔵している」など。
[類語]持つ有する擁する領する占める所持保有現有領有具有私有民有公有国有官有共有占有専有享有所蔵収蔵私蔵秘蔵愛蔵死蔵退蔵珍蔵

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精選版 日本国語大辞典 「所有」の意味・読み・例文・類語

あら‐ゆる【所有】

  1. 〘 連体詞 〙 ( 動詞「あり(有)」に、上代の自発・可能の助動詞「ゆ」の連体形が付き一語化したもの ) ありうる限りの。すべての。ありとあらゆる。
    1. [初出の実例]「衆生の宿の悪業と刀兵と病と饑饉とを、所在(アラユル)悩害に随ひて、皆能く解脱せしむ」(出典:地蔵十輪経元慶七年点(883)一)
    2. 「獅子の猛きこと有らゆる動物の第一なるを以て百獣の王と称せらる」(出典:日本読本(1887)〈新保磐次〉五)

所有の語誌

( 1 )上代に用いられた「ゆ」「らゆ」は、平安時代になると用いられなくなり、「いはゆる」「あらゆる」などだけが漢文訓読文に用いられた。
( 2 )連体詞になりきらないで、上に連用修飾語をとる用法も間々見られる。「吽迦陀野儀軌保安二年点」の「身口意業に所有(アラユル)一切の悪業重罪」、「太平記‐六」の「洛中にあらゆる所の手者(てのもの)共、馳加りける間」など。


しょ‐ゆう‥イウ【所有】

  1. 〘 名詞 〙 自分の物として持っていること。所持すること。また、そのもの。
    1. [初出の実例]「所有の色には、あまねく一切衆生を利益せんとおぼしたり」(出典:栄花物語(1028‐92頃)鳥の舞)
    2. 「一等賞だらうと思はれる位な鼻を所有して」(出典:吾輩は猫である(1905‐06)〈夏目漱石〉三)
    3. [その他の文献]〔孟子‐公孫丑〕

しょ‐う【所有】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「う」は「有」の呉音 ) =しょゆう(所有)
    1. [初出の実例]「歎摂受正法所有功徳」(出典:勝鬘経義疏(611)摂受正法章)
    2. 「十方所有(ショウ)の妙華を」(出典:雑談集(1305)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「所有」の意味・わかりやすい解説

所有 (しょゆう)

所有とは,人間が生存するうえで不可欠な,外界の物資に対する支配を表す概念である。したがってそれは,第一義的には人と物の間の関係である。人間が経済活動を営む際には,生産を目的としたものであれ直接消費の目的であれ,外的物資に働きかけるが,この活動が現実に意味をもつためには,物資は主体にとって有用でかつ制御可能な財でなければならない。制御とは,(1)消費,生産といった財の変換,(2)交換のような財の入手・処分,の二つの意味をもつ。ここで一定の目的を達成するために(1)の意味で財を制御することを狭義の使用,(1)(2)両方の意味での財の制御を広義の使用と呼べば,広義の使用の無制限で無期限なあり方を所有とみなすことができる。あるいは狭義の使用に入手・処分を付加したものが所有であり,これは民法でいう使用,収益,処分の権利を所有権の内容とする考え方に対応している。

 所有は第一義的には人と物の間の関係であるが,これは社会的に承認された関係でなければならない。つまりそれは,より本質的には人と物の関係に表された人と人の関係であり,この点でこそ所有は社会的な現象となる。使用や所有が人と人の関係であるのは,それらが財をめぐる人々の競合関係を引き起こすからであり,これは使用や所有がそもそも排他的性格を有する以上,当然のことである。競合という社会的状況は,所有主体の特定化つまり所有の社会的承認を必要とするが,この社会的承認において,所有の歴史的事実的側面と,抽象的(観念的)規範的側面が重なり,また対立する。前者は例えば占有や総有のように,制度上の所有権を設定される以前に事実上,慣行的に継続してきた使用状態を指すのに対し,後者は近代法によりその権限の保護を明確化された制度的側面を指す。近代国家は人々の利害対立から生ずる紛争に際し,法的措置を主要な解決手段とするため,所有の規範的,抽象的側面が重視され,場合によっては財の歴史的,慣行的な使用の事実と衝突するときもありうることになる。

 ところで,使用をめぐる競合の程度とその解決様式によって,種々の所有形態を区別できる。所有形態は所有主体の側と所有対象の側からとらえることができるが,まず所有主体の側から見ると,所有主体が私的個人であるか社会集団であるかによって,私的所有と社会的(集団的)所有が区別される。この区別を強調したのはマルクスであるが,マルクスにとってはここで財一般ではなく,生産手段の所有形態こそが問題とされた。というのは,生産関係(生産,分業の方式)と生産力の関係が社会の歴史的段階を決定する中心的要因であり,生産関係を決定するものは生産手段の所有形態だからである。したがって,マルクスはここで,生産手段が共同体や国家に帰属する原始共同体や社会主義社会のような共同所有社会に対して,私人たる資本家が所有主体たる資本主義社会を鋭く対比させただけでなく,所有の相異なる様式を歴史的発展段階に対応づけようとした。すなわち原始的氏族制においては共同体的所有であるのに対し,社会的分業と交換のいっそう発達した古代奴隷制においては私的所有が現れ,封建社会における封建的所有,近代社会における資本主義的所有がこれに続くとされる。

 しかし現代社会の所有問題を考える場合には,マルクスの所有形態の発展段階論や,私的所有と社会的所有の区別だけでは十分とはいいがたい。まず第1に,現代経済の企業形態を特徴づけるものは,株式会社に典型的に見られるような所有と経営の分離であるが,ここでは生産手段の所有者としての資本家の意味が無分明とならざるをえないことがあげられる。現代の多くの企業では,資本の形式上の所有者は経営から切り離された個々の株主であり,これを企業に対する通常の意味での所有者とはみなしがたいのである。第2に,確かに近代社会は私的所有を原則とするが,私的経済主体のみからなる純粋な競争的市場というものは,理念上はともかく現実上はありえず,いかなる資本主義社会にあっても,福祉的理念や国家権力に基づいて国家が経済的活動へ介入する,いわゆる〈混合経済〉であった。混合経済のもとでは,私的個人による私的所有と公共機関による公的所有(社会的所有)が並存しまた拮抗することになる。したがって所有という観点からながめた場合,政府活動の規模,いい換えれば公的な市場介入の程度をどう設定するかという,すぐれて現代的な問題は,私的所有権と公的所有権をどのように設定すれば望ましいか,という観点からながめることもできるわけである。このような問題に対する一つの基準となるのが,所有対象の観点である。

 所有対象(財)の観点からすれば,私的財と公共財が区別されなければならない。使用に際し競合が存在する財が私的財,競合が存在しないか,あるいは競合しても他者を排除困難な財を公共財という。前者は通常,市場で売買される財であり,後者は国防,警察,消防,道路,公園など市場化困難な財,サービスである。明らかに私的財は私的所有の対象となるが,公共財を私的所有にゆだねるのは困難であったり,また望ましくない場合が多い。というのは,公共財に私有権を設定する,つまり他人の使用を排除するためには多大なコストを要したり,また多数の利害にからむ財を私的に処分されるのは望ましくないからである。したがって市場経済においても,公共財は社会的所有にゆだねられるのが一般的とされる。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「所有」の意味・わかりやすい解説

所有
しょゆう
property; Eigentum

主として,K.マルクスの社会理論の中で厳密化されてきた概念である。吉田民人は,マルクスの所有概念を「一定の社会構成体の内部で社会的に保障された,一定の類的または個的主体による,一定の生産または生活諸条件に対する,一定のわがものとしての関係行為」と要約している。さらに吉田は,所有概念を,「社会的制御能」の概念に一般化し,その内的な構造をていねいに分析している。社会的制御能とは,「一定の社会システムにおいて社会的に保障または禁制された,一定の主体の,一定の資源に対する,一定の自律的な関係行為の可能性の集合」のことである。なお,所有と類似の用語に,M.ウェーバーが使った「専有 Appropriation」がある。

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普及版 字通 「所有」の読み・字形・画数・意味

【所有】しよゆう

所持する。

字通「所」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の所有の言及

【知行】より

…補任権者(国司,領家,幕府)の側でも,〈相伝の所領たるによって,○○職に補任する〉という趣旨の補任状を発給してなんらあやしまなかったのである。 このように,知行は中世の所有法体系にとって中核的意味をもったので,これまで法制史学上,その法的性質をめぐって論争がくりひろげられてきた。この時代には,近代法にあるような抽象的な所有権の観念がなく,ひとびとは〈○○職が何某の所有権に属する〉とか〈○○職について何某が所有権をもっている〉とかいういい方はせず,〈何某が○○職を知行する〉〈何某が知行する○○職〉と表現した。…

※「所有」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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