日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ボルツァーノ(Bernhard Bolzano)
ぼるつぁーの
Bernhard Bolzano
(1781―1848)
プラハで活躍したオーストリアの哲学者、数学者。カトリックの司祭でもあり、15年間プラハ大学で宗教哲学を担当したが、1819年チェコ独立運動に加担した罪で、当時のチェコの支配者オーストリア政府により罷免された。哲学上の主著は1838年刊の『学問論』全4巻。ドイツ観念論を批判し、独自の客観主義的論理学説を展開した。心理的なものに対する論理的なものの独立性を主張した彼の学問論は、命題自体、表象自体、真理自体という三つの基礎概念に支えられている。これら3概念は、主観の表象作用や判断作用とは無関係に、独自に存立する理念的な諸対象であり、したがって時間‐空間的に限定される現実存在ではないとされる。同様の考え方により、純粋数学はもっぱら純粋概念に基づく学であり、したがって直観を必要とせず、数学の真理はすべて純粋な概念真理であるとされる。哲学史的には、フッサールやマイノングへの影響が重視される。
[立松弘孝]
『B・ボルツァーノ著、藤田伊吉訳『無限の逆説』(1978・みすず書房)』▽『藤田伊吉著『ボルツァーノの哲学』(1963・創文社)』