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宗教哲学 しゅうきょうてつがくphilosophy of religion

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

宗教哲学
しゅうきょうてつがく
philosophy of religion

宗教一般の本質と,神の存在に対する人間の信仰に関する哲学的反省をいう。本来,神の本性や人間の宇宙における位置,人格の不死,絶対的義務などは宗教的な問題であり,事実,西洋哲学史上でも,宗教哲学はキリスト教神学と分ちがたく結びついて展開している。しかしプラトンやアリストテレスはそれに先立って全存在の源泉であり世界を英知的たらしめている神的実在に対する彼らの信仰を哲学的に表明しているが,一方ストア学派やエピクロス学派の思想家たちも神や宗教の起源に関する見解を述べている。宗教的論題は,中世には神学で扱われていたが,哲学的反省の主題となるのは,哲学がすべての基本的な概念を合理的省察の対象にしようとするようになった 17世紀以後のことで,特にその頃のイギリス理神論やフランス無神論を経てドイツ観念論においてであり,ヘーゲルは形而上学的体系を構成した。またカントは批判哲学において,実践理性の要請として神を認めた。一方,近代神学の祖といわれるシュライエルマッハーは,それまでの合理主義的な考え方に対して,宗教哲学と神学との統合を主張した。さらに哲学の人間学的な方位への転換に伴って,特に生の哲学や実存主義の立場からキルケゴール,ベルグソン,ヤスパースらが独自の見解を示している。このような宗教哲学が神学から区別されるのは,後者が結局は神についての信仰の理解一般を問題とする点にあると規定されるのに対し,前者は人間の宗教体験一般を問題とする点にある。

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デジタル大辞泉の解説

しゅうきょう‐てつがく〔シユウケウ‐〕【宗教哲学】

広義の宗教学領域の一。人間の理性・直観・精神のうえに立つ哲学的思弁によって、宗教一般の本質・意義を探る学問。信仰の立場から研究する神学とは区別される。

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百科事典マイペディアの解説

宗教哲学【しゅうきょうてつがく】

英語philosophy of religion,ドイツ語Religionsphilosophie(Religionswissenschaft)などの訳。宗教の哲学的基礎づけ一般の称。
→関連項目宗教学

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世界大百科事典 第2版の解説

しゅうきょうてつがく【宗教哲学 philosophy of religion】

宗教哲学とは文字どおりには宗教を哲学的(客観的,思弁的)に考察する宗教関係諸学の一分野である。しかし宗教現象は多様であり,人によってその定義は異なる。哲学についてもまたしかりである。宗教哲学とは何かについても当然各人各様である。しかし,いちおう宗教哲学は多様な宗教の根底を追究し,理論づけ,体系づける学問だと言いうる。宗教関係諸学が成立するのには,特定宗教の外から客観的にその内容を観察し,他宗教と比較する態度がまずなくてはならない。

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大辞林 第三版の解説

しゅうきょうてつがく【宗教哲学】

宗教の普遍的本質・意義・価値などについて哲学的な省察を加える学問。イギリスの理神論、フランスの無神論を経て、カント・ヘーゲルなどにおいて神学から独立した立場を確立。経験科学としての狭義の宗教学はそこから分化したもの。広義には宗教学の一分野。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

宗教哲学
しゅうきょうてつがく
philosophy of religion英語
philosophie de la religionフランス語
Religionsphilosophieドイツ語

宗教の本質や意義を哲学の方法で究明し、宗教の真理性を哲学的に基礎づける学問。歴史や社会に現れた諸宗教現象を実証科学の立場で研究する宗教学や、特定の宗教内部でその宗教の教義や教典を検討する神学・教学などとは異なる。
 古代ギリシアに始まった哲学は、一般に、人間の経験しうる現象世界を、経験を超えた形而上(けいじじょう)学的理念から説明しようとする試みであった。宗教が人間の感覚的、悟性的な経験を超え出た彼岸や神への通路を開くものとすれば、プラトンやアリストテレスをはじめとする古代哲学においては、哲学そのものが一種の宗教哲学であったといえる。また、キリスト教の神学を形成するにあずかったアウグスティヌス、トマス・アクィナスらの中世の教父哲学やスコラ哲学は、文字どおり宗教哲学を中核に据えた哲学であった。
 しかし、近世に至って人間の理性に十全の信頼を置く合理主義の哲学が登場すると、哲学における宗教性の剥奪(はくだつ)の傾向が強まり、宗教哲学は改めてその存立が問われることになる。したがって、厳密な意味で宗教哲学が自覚的に哲学の一分野として確立されるに至ったのは、カントとそれ以降のドイツ観念論の哲学においてであった。
 カントは、人間の理性に知的・理論的認識を超えた働きをも認め、道徳の場で働く善意志の実践理性に宗教の根拠を置く。ヘーゲルは、論理学や自然哲学から区別される精神哲学のなかの最高部門に宗教哲学を位置づけつつ、絶対精神の世界支配的展開を叙述する哲学の全体系は絶対的宗教として完成するという汎神論(はんしんろん)的宗教哲学を語った。
 今日では、あくまでも哲学の立場から宗教一般の真理性を基礎づけようとするジェームズやヤスパースのような宗教哲学が説かれる一方で、キリスト教の啓示信仰を容認しながらこれにかなった哲学的思考を展開する宗教哲学が有力である。そのような宗教哲学者としては、人間の絶対的依存感情に宗教の本質を求めるシュライエルマハー、人間の根源的な不安と絶望を暴いて逆説の神に救いを求めるキルケゴール、歴史の相対性を神の絶対性で克服するトレルチ、科学の進展を終末論と結び付けて理解するテイヤール・ド・シャルダン、諸文化の底を流れる究極的関心を介して存在の根拠へ帰るティリヒなどをあげることができる。ユダヤ教徒のブーバーの対話原理に基づく宗教哲学も影響力が大きい。[柏原啓一]
『波多野精一著『宗教哲学』(1935・岩波書店) ▽藤田富雄著『宗教哲学』(1966・大明堂) ▽J・ヒック著、間瀬啓允訳『宗教の哲学』(1968・培風館) ▽P・ティリッヒ著、柳生望訳『宗教哲学入門』(1971・荒地出版社)』

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世界大百科事典内の宗教哲学の言及

【宗教学】より

…ところが,とくにヨーロッパにおいて16世紀の宗教改革,17世紀の自然科学の興隆や近世哲学の展開にともない,宗教の本来のあり方を理性の光に照らして体系化しようとする動きがおこった。そこから生じた研究の流派を宗教哲学(たとえばI.カント)といい,さきの神学が一般に護教的であるのに対して,合理的で批判的な立場を鮮明にした。一方,15~16世紀のいわゆる大航海時代以降,世界の各地にさまざまな宗教の存在することが見いだされ,そこから諸宗教を比較研究する方法があらわれた。…

※「宗教哲学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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