ムコール菌症

内科学 第10版 「ムコール菌症」の解説

ムコール菌症(真菌感染症)

(3)ムコール菌症(mucormycosis)
 ムコール菌は,自然界に広く分布し,通常,非病原性の真菌とみなされている.しかし,糖尿病患者,あるいは白血病AIDSなどで免疫能が低下した患者において病原性を有し発症する.深在性では,脳型,肺型,消化管型,全身播種型などに分けられている.脳型ムコール菌症は,口腔内や副鼻腔を侵入門戸とし眼窩部や動脈に侵入・血栓形成し,局所破壊病変や脳病変を引き起こす. 神経症状では,眼球突出,眼筋麻痺,片麻痺が多く,眼窩内症状と髄膜刺激症状を認めたらまず本疾患を疑う.海綿静脈洞,眼動脈,内頸動脈の血栓症を随伴し,血管への親和性が強い特徴がある.鼻腔,結膜の分泌液の培養,羅患部位の生検により診断する. 治療はアムホテリシンBあるいはアムホテリシンBリポソーム製剤と5-FCの併用療法を行う.[津川 潤・坪井義夫]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ムコール菌症」の意味・わかりやすい解説

ムコール菌症
ムコールきんしょう
phycomycosis; mucormycosis

主としてケカビ目のケカビ属 Mucor,クモノスカビ属 Rhizopusなどに属する諸菌によって急性壊死性炎症を起す疾患。これらの菌は食物や野菜の腐敗に関係しており,日常よく見受けられる菌である。肺,外耳,脳,眼および全身性の諸病型に分けられる。肺ムコール症が最も多く,咳,痰,発熱など,急性気管支炎様の症状が現れるが,血管内に侵入しやすいため,末期には血管壁が侵され,肺梗塞 (→肺塞栓症 ) を起す。脳ムコール症では脳腫瘍に似た症状が出る。治療にはアムホテリシンBが用いられる。

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栄養・生化学辞典 「ムコール菌症」の解説

ムコール菌症

 →ムコール症

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