『新約聖書』のなかの三通の書簡。「ヨハネの手紙」ともいう。宛先(あてさき)が教会全般であるという意味で、「ヤコブ書」「ペテロ書」「ユダ書」とともに古くから公同の手紙とよばれている。しかし第二の手紙は特定の一教会に、第三の手紙はガイオという名の個人にあてられている。第1、第2の手紙は、キリストの人性を否定して倫理的に自由主義的傾向をもつグノーシス主義的異端を論駁(ろんばく)し、信徒に、教会の正しい教えに従い、隣人愛を実践することを勧めている。第三の手紙では、教会の主導権を得ようとしているデオテレペスという人物の悪に従わず、善を行うことが勧められる。
三通とも紀元100年前後に小アジアで「長老」とよばれる教会の指導者ヨハネによって書かれたものと思われる。
[川島貞雄]