ヨハネ書(読み)ヨハネしょ(その他表記)Epistles of John

精選版 日本国語大辞典 「ヨハネ書」の意味・読み・例文・類語

ヨハネしょ【ヨハネ書】

  1. 新約聖書ヨハネ第一書(ヨハネの第一の手紙)・第二書(ヨハネの第二の手紙)・第三書(ヨハネの第三の手紙)の総称。成立年代は一世紀末から二世紀と推定される。第一書は「ヨハネによる福音書」と同一著者と推定され、キリストの兄弟愛を主張グノーシス主義異端論駁。第二書はヨハネと名乗る長老の手紙の形式をとり、相互愛、キリストの受肉を主張し、グノーシス主義の異端を警告する。第三書はヨハネと名乗る長老からガイオ宛の手紙の形式で書かれ、宣教師たちへのもてなし方、分派行動者に対する処置などについて述べる。これらはさらに、「ヨハネによる福音書」「ヨハネ黙示録」とともにヨハネ文書と総称される。ヨハネの手紙。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨハネ書」の意味・わかりやすい解説

ヨハネ書
よはねしょ
Epistles of John

『新約聖書』のなかの三通の書簡。「ヨハネの手紙」ともいう。宛先(あてさき)が教会全般であるという意味で、「ヤコブ書」「ペテロ書」「ユダ書」とともに古くから公同の手紙とよばれている。しかし第二の手紙は特定の一教会に、第三の手紙はガイオという名の個人にあてられている。第1、第2の手紙は、キリストの人性を否定して倫理的に自由主義的傾向をもつグノーシス主義的異端を論駁(ろんばく)し、信徒に、教会の正しい教えに従い、隣人愛を実践することを勧めている。第三の手紙では、教会の主導権を得ようとしているデオテレペスという人物の悪に従わず、善を行うことが勧められる。

 三通とも紀元100年前後に小アジアで「長老」とよばれる教会の指導者ヨハネによって書かれたものと思われる。

[川島貞雄]

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