ヨーロッパ共同体特許(読み)ヨーロッパきょうどうたいとっきょ

改訂新版 世界大百科事典 「ヨーロッパ共同体特許」の意味・わかりやすい解説

ヨーロッパ共同体特許 (ヨーロッパきょうどうたいとっきょ)

ヨーロッパ共同体の統一特許条約(1975署名。ルクセンブルク条約あるいは第2条約とも呼ばれる)により付与される特許。EU特許ともいう。その特許の効力は共同体全域に及び,一体としてのみ登録,変動消滅が認められ,その限りにおいては,共同体全域が一ヵ国のように扱われる。この条約は,共同体内の物資の自由流通という理念に従って作成されたものではあるが,1997年現在未発効である。

 この条約が発効すれば,共同体特許に関する限り共同体は一国として扱われるが,共同体各国の国内特許法も存置されるため複雑な法状態となる。出願人は,共同体各国の国内特許法に従った各国別の出願と共同体特許条約に従った出願とを選択的になすことができ,出願国数や出願費用等を勘案してどちらかを選ぶことになる。ただし,ヨーロッパ特許の出願をする場合は,その指定国としてイギリス,フランス,ドイツ等の個々の共同体加盟国を選ぶことはできず,必ず共同体を指定しなければならないが,この条約が発効するまでの間は個々の共同体加盟国も指定できる。すなわち,同一地域において各国特許法と共同体特許法が並存するが,ヨーロッパ特許の被指定国に関しては共同体特許のみが存在することになる。日本国民がこの共同体特許の出願をなしうるという点は,ヨーロッパ特許の場合と同様である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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