ヨーロッパ国境沿岸警備機関(読み)よーろっぱこっきょうえんがんけいびきかん

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ヨーロッパ国境沿岸警備機関
よーろっぱこっきょうえんがんけいびきかん

ヨーロッパ連合EU)の対外国境(域外国境)管理のための加盟国協力支援を目的として、2004年に設立されたEU専門機関。略称フロンテックス(FRONTEX)。設立当初の名称はヨーロッパ対外国境管理協力機関であったが、2016年には権限を強化し活動範囲を広げるために、新たにヨーロッパ国境沿岸警備隊の創設が合意され、現名称へと変更した。本部ポーランドワルシャワ

 2017年時点で、EU加盟28か国中22か国と非加盟国4か国は、域内の国境における出入国管理を原則不要とする領域シェンゲン領域)を形成している。そのため域内の安全を確保するうえで重要となってくるのが、対外国境における入国管理である。そこでフロンテックスは、加盟国の対外国境管理活動における協力の調整や、訓練の支援、対外国境におけるリスク分析や調査、情報収集を行ってきた。

 主要な任務の一つが、複数の加盟国の自発的な協力を原則として、支援の必要な対外国境に人員などを派遣する共同作戦である。2011年以降、中東・北アフリカから地中海を渡ってヨーロッパを目ざす人々が急増し、フロンテックスの枠組みのなかで共同作戦が地中海で実施された。多く人命が救助される一方、さらに多くの移動を引き寄せることが危惧(きぐ)された。フロンテックスに対しては、加盟国は国境警備官などを割当てに応じて出すことが義務づけられ、緊急時には必要な要員が派遣される。

[柄谷利恵子 2018年6月19日]

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