改訂新版 世界大百科事典 「ラズノチンツィ」の意味・わかりやすい解説
ラズノチンツィ
raznochintsy
ロシアの雑階級人。18世紀後半~19世紀のロシアで,特権をもつ貴族と圧倒的多数の農民の中間の諸身分を指す。より狭くは,みずからの親が属する身分から意識的に離脱し,教育を受け,都市で教師,医師,法律家,ジャーナリストなどの職業につく人々を指す。彼らは新旧両世界の間に生きる葛藤,苦悩の中から新しい価値観を築きあげ,身分制が残る社会,文化生活や革命運動に新段階をもたらしたが,一部には知的水準の低下を指摘される。レーニンはロシア革命運動の中で,貴族とプロレタリアの革命家をつなぐ第2世代としてラズノチンツィの革命家(ベリンスキー,チェルヌイシェフスキー,ドブロリューボフたち)を指摘した。1861年の農奴解放前後のラズノチンツィ・インテリゲンチャの姿は,ツルゲーネフの小説《父と子》(1862)の主人公バザーロフに最もよく描かれている。彼らの多くは自然科学を学び,貴族的,理想主義的,観念論的な旧世代とその価値を否定した。
執筆者:松原 広志
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報