改訂新版 世界大百科事典 「一門衆」の意味・わかりやすい解説
一門衆 (いちもんしゅう)
戦国期の本願寺宗主の直系庶子。一門とは本来同一の法門を継承する人々の意味。血脈相承の本願寺では,歴代宗主ごとに繁出する庶子群を一家衆(いつけしゆう)と総称し,そのうち戦国期の8代蓮如,9代実如と姻戚関係にある一部の一家衆に限り一門衆と称した。一門衆を設けた意図は,宗主とその庶子・親族団を中心にした集権的教団の形成にあった。本願寺在住の者は宗主を補佐し,地方の者はその他の門末を統轄した。宗主より遣わされた寺侍(下間氏)が事務面で,また与力を命ぜられた各地の門末が経済面で彼らをささえた。元来個人に与えられた一門衆身分は彼らの子孫へと受けつがれ,あたかも寺格を示すもののごとく固定化していった。一方,宗主の代替りごとに新たな庶子・親族団が形成され,11代顕如のとき院家(いんけ)の制が,12代教如・准如のとき連枝(れんし)の称が設けられた。そのため身分・役割両面で一門衆の独自の存在は意味を失うこととなった。
執筆者:金龍 静
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報