いち‐もん【一門】
〘名〙
① 一つの門。
※
今昔(1120頃か)九「安上の一門許開て、人皆此より出入す」
※続日本紀‐宝亀三年(772)四月丁巳「一門五位者男女十人」
※古今著聞集(1254)一六「一門の物ども、悦びにつどひけるに」
③ 宗教、
学問、
武道、芸能などの
流派を同じくする人々。同門。
※古今著聞集(1254)二「其の後、一門の僧相継て居住して、修学今に絶えずとなん」 〔南斉書‐劉絵伝〕
④ 嫡宗家を中心に同族観念で構成された大名家の家格の一つ。
※毛利家文書‐(年月日未詳)(
室町)氏名未詳覚書「上山事は当家一門之事」
⑤ 同一類のこと。〔淮南子‐原道訓〕
⑥ 仏語。
生死を出る道、または悟りに至る道のたとえ。
※往生要集(984‐985)
序「是故依
二念仏一門
一、聊集
二経論要文
一」 〔
法華経‐譬喩品〕
⑦ 仏語。真言密教で、
大日如来の徳性やはたらきの一つ。マンダラの
諸尊はそのいちいちを象徴する。
※真言内証義(1345)「一門より普門に入るは此の
宗也」
⑧ 大砲一つ。
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いち‐もん【一門】
1 同じ家系、または、同じ家族の人々。一族。一家。「藤原一門」
2 仏教などで同じ宗派の人々。「天台一門」
3 学問・武道・芸能などで、同じ師匠や指導者をいただく人々。「芭蕉一門」
4 特に大相撲の世界で、名力士の指導を受けた親方・力士の作る集団。出羽海一門、二所ノ関一門、時津風一門、高砂一門、立浪一門の五つ。
[補説]日本相撲協会の理事選挙は各一門ごとに推薦者数を配分するのが従来のやり方。
[類語]一族・家・家門・血族・家系・家筋・氏・血筋・血脈・血統
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一門
いちもん
平安時代末期以降の武士社会における血族組織。一族,一宗,一流,家門などともいう。本家と分家とから成り,分家は経済的には本家から独立していたが,軍事的には一門の首長である本家の家督の支配下にあった。鎌倉幕府は,この一門の組織のうえに成り立っていた。 (→惣領 )
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一門
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いちもん【一門】
平安時代の中ごろ以降,中央貴族や武士層の族的結合を示す表現として広く用いられた。一門のほかに一族,一家,一流,門葉,家門など,さまざまな呼称が存在するが,これらの呼称の間にそれほど厳密な区別があるとは考えられない。ただ概していえば,一族という語が,先祖開発の所領に対する共同知行集団とみることができ,それだけに,その族員の分布地域も比較的せまく限られるのに対して,この一門という語は,ある共通の先祖をもつ子孫の人々が,土地所有の枠にとらわれることなく形成している血縁集団,ないし擬制血縁集団そのものの意味で用いられることが多い。
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世界大百科事典内の一門の言及
【家格】より
…他方,中世社会の担い手である武士領主層の場合については,平安時代の後半(11世紀中ごろ)からの大開発の時代における彼らの所領獲得が,そのきっかけになったとみるべきだろう。彼らは開発領地に本宅を構え,その本宅の地名を名(苗)字にいただき,その一族一門としての団結を固めていったが,その一族一門は,やがてそれぞれの開発所領規模の大きさに応じて,一定の社会的位置づけを地域社会で付与される方向に向かったのである。したがって,中央貴族,武士いずれの場合も,一族一門の生活源たる家業や所領の獲得こそが,家格観念を生み出してくる最大の条件にほかならないが,それはやがて,より有力な人物を主君にいただき,その政治的な保護を受けることにより,さらに安定化する道をたどった。…
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