日本大百科全書(ニッポニカ) 「万景峰号」の意味・わかりやすい解説
万景峰号
まんぎょんぼんごう
北朝鮮と新潟を結ぶ北朝鮮籍の不定期貨客船。在日朝鮮人の帰還事業を契機に1971年(昭和46)に就航した。物資輸送や親族訪問のため年20回以上往復する。1992年(平成4)から2代目の「万景峰'92」号が就航している。排水量9672トン。乗客定員は約250人。対日工作や不正送金に利用されているとの疑惑が指摘されている。2003年5月に行われたアメリカ上院公聴会で、北朝鮮の元技師が、北朝鮮のミサイル部品の90%が日本から運ばれたと証言し、万景峰号がその輸送手段であることを明らかにした。また、同船内から、日本国内に潜伏する工作員に対する指令が行われていたことも、警視庁の調べで明らかになっている。さらに、日本からの渡航者が100万円以上の現金を持ち出す場合、「外国為替(かわせ)及び外国貿易法」で届けることが義務付けられているにもかかわらず、万景峰号によって不正送金が繰り返されている疑いも出ている。日本政府は2003年春、万景峰号に対し、海上保安庁、法務省、財務省などが合同で立ち入り検査を実施するなど、現行法の規定を総動員して監視にあたる方針を決めた。このため北朝鮮側は、一時入港を見合わせたが、同年8月から新潟港への入港を再開した。しかし2006年7月、北朝鮮が日本海に向けてテポドン2号など計7発の弾道ミサイルの発射実験を行ったため、日本政府は万景峰号の日本入港を半年間禁止した。さらに同年10月北朝鮮が核実験を実施したと発表したため、万景峰号だけでなくすべての北朝鮮籍船舶の半年間の日本入港禁止を決定し、その後も日本人拉致(らち)事件の解決に向けた進展がないことを理由に入港禁止措置の延長が続いている。
[水野雅之]
『辺真一著『北朝鮮100の新常識』(1999・ザ・マサダ)』