デジタル大辞泉
「延長」の意味・読み・例文・類語
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えん‐ちょう‥チャウ【延長】
- [ 1 ] 〘 名詞 〙
- ① ( ━する ) 物事の長さや状態などをさらにのばすこと。また、のびること。
- [初出の実例]「太子曰、汝麿者命可二延長一」(出典:聖徳太子伝暦(917頃か)下)
- ② ある長さの距離や時間などをひとまとめにした場合の全体の長さ。全長。
- [初出の実例]「おとといの晩なんか猛烈でしたネ、延長(エンチョウ)二時間半にわたって」(出典:漫才読本(1936)〈横山エンタツ〉僕の家庭)
- ③ ( ━する ) 与えられた線分を一方向に延ばして、より長い線分や半直線にしたり、両方向に延ばして直線にしたりすること。また、そのようにしてできた線分、半直線、直線。〔数学ニ用ヰル辞ノ英和対訳字書(1889)〕
- ④ 哲学で、事物の表現しているさまについていう語。すなわち幅、広さ、高さ、長さ、厚さ、深さ、距離、方向などの語によって表現される広がりの総称。広延。〔哲学字彙(1881)〕
- ⑤ 前と形はちがうが、同様の性格が引き継がれているもの。
- [初出の実例]「パブリック・スクールはプレップ・スクールの延長であり」(出典:自由と規律(1949)〈池田潔〉その制度)
- ⑥ 「えんちょうせん(延長戦)」の略。
- [ 2 ] 平安時代、醍醐、朱雀両天皇の代の年号。洪水、疾疫のため、延喜二三年(九二三)閏四月一一日改元。延長九年(九三一)四月二六日、次の承平に代わる。出典は「文選‐白雉詩」の「彰二皇徳一兮侔二周成一、永延長兮膺二天慶一」による。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例
えんちょう【延長】
日本の元号(年号)。平安時代の923年から931年まで、醍醐(だいご)天皇の代の元号。前元号は延喜(えんぎ)。次元号は承平(じょうへい)。923年(延喜23)閏4月11日改元。水潦(すいろう)(長雨)や疾疫の凶事を断ち切るために行われた。『文選(もんぜん)』を出典とする命名。讒訴(ざんそ)により大宰府に左遷された菅原道真(みちざね)が903年(延喜3)に現地で死去すると、政敵の藤原時平(ときひら)をはじめとする藤原氏一族や皇族の死が相次ぎ、930年(延長8)には朝議中の清涼殿の落雷で、藤原清貫(きよたか)ら道真の排斥に関わった要人が多数死傷した。こうした凶事・異変に対し、道真の祟りとする噂が飛びかった。その直後、醍醐天皇も発病し9月22日に朱雀(すざく)天皇)に譲位、同月29日に崩御した。
出典 講談社日本の元号がわかる事典について 情報
延長(extension)
えんちょう
extension 英語
extension フランス語
Ausdehnung ドイツ語
物体はすべて空間上に位置し、ある形と大きさをもって空間の一部を占めている。物体のこのような広がりが延長といわれ、物体の基本的な性格としてしばしば注目されてきた。とくにデカルトでは、延長は心とともに実体とされた物体の本性と規定され、物体の世界の現象はすべてこの延長とその運動としてとらえられている。スピノザにおいては、物体は実体である神の属性の一つとされているが、そうした物体の本性としては、やはり延長が考えられていた。またロックにおいても、延長は第一性質として固体性などとともに実在性をもったものと考えられていた。
しかしカントになると、延長は物自体の属性とはされず、純粋直観の形式とされ、「直観の公理」によって経験の対象となる限りの物体の性格とされる。すなわちカントでは、延長はその実在性が否定され、ただ経験的な実在性をもつものとされている。
[清水義夫]
『デカルト著、落合太郎訳『方法序説』(岩波文庫)』
延長(中国)
えんちょう / イエンチャン
中国、陝西(せんせい)省北部の県。延安(えんあん)市に属する。常住人口12万5391(2010)。延安より東へ延河を下った所にある。隋(ずい)代にここに延安県が設けられ、唐代に延長と改名されて延安府に属した。付近ではすでに宋(そう)代に石油が発見され、一部は実用に供されていた。近代になって大規模な開発が図られ、年産約70万トン(2011)に達する。機械工業、食品加工業、皮革工業などの工場が立地する。
[秋山元秀・編集部 2017年7月19日]
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普及版 字通
「延長」の読み・字形・画数・意味
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
延長
えんちょう
extention
デカルトにおいて重視された近代哲学史における基本的な概念。感覚的自明性として物体は長さ,広さ,深さに広がっているものとみることができるが,物体のこのような空間上の広がりを延長という。デカルトの二元論において,物体は精神とともに実体であり,延長は物体の本性とされる。スピノザにおいても物体の本性として延長はとらえられ,またロックも第1性質として延長の実在性を認めた。このように,延長を客観的実在性として物そのものに帰属させる立場に対して,カントは延長を純粋直観の形式としてとらえ,これに経験的実在性のみを認めている。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
世界大百科事典(旧版)内の延長の言及
【デカルト】より
…ところで誠実な神が私を欺くことはありえない以上,このことは私の外に物体的な世界が実在することを示す。ただしこれら感覚的観念の表象的内容自体は物体の真の姿を表すものではなく,物体の本質は精神がそれについて明晰判明に理解する〈延長(広がり)〉以外にありえないのである。
[自然学]
無限の広がりをもつ等質の物質が全宇宙を構成する。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」