日本大百科全書(ニッポニカ) 「三匹猿」の意味・わかりやすい解説
三匹猿
さんびきざる
3匹の猿が、一は両手で目をおおい、一は耳をおおい、一は口をふさいでいるもの。これを「見ざる、聞かざる、言わざる」といい、あるいは絵に描き、あるいは木石に彫って、ときにはこれを処世訓とする風もあった。おこりについては、伝教(でんぎょう)大師あるいは天台大師が天台の不見・不聞(ふもん)・不言の三諦(さんたい)を猿の形に託して表したのに始まるとの説がある。しかしこの三匹猿の形がもっとも多くみられるのは、いまも村里に残る庚申(こうしん)塔であって、庚申の本尊を青面(しょうめん)金剛童子とし、三匹猿はその侍者だとする説が行き渡っている。これからみても、これは庚申信仰でいう三尸(さんし)の説の三と、カノエサル(庚申)のサルとが合体してできた俗信と考えられる。
[石塚尊俊]