改訂新版 世界大百科事典 「三政」の意味・わかりやすい解説
三政 (さんせい)
朝鮮,李朝における田税(田政),軍役(軍政),還穀(還政)の三大収取体制をいう。田税は初め科田法で収穫物の10分の1とされたが,李朝後期には一結(結負制)につき本来の田税が米4斗,大同法による大同米が12斗,その他が4斗とされた。軍役は常民の壮丁すべてに課され,初めは交替で実役に赴いたが,李朝後期には壮丁1人につき綿布を年2匹納めた(軍布といい,米12斗に相当)。一種の人頭税であり,1750年の均役法で半減された。還穀は還上ともいい,本来は10%の利率で官庁が穀物を貸与する制度であったが,李朝後期には帳簿上貸与した形をとり利息だけをとる一種の税となった。田税は多様な付加税,軍布は乳幼児からの収布(黄口簽丁)・死亡者からの収布(白骨徴布)や一族・近隣からの収布(族徴,隣徴),還穀も多様な付加徴収など実際は規定外の収奪が多く,農民はその負担にたえられず,壬戌(じんじゆつ)民乱などの農民反乱を起こした。
執筆者:矢沢 康祐
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報