三輪山説話(読み)みわやませつわ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「三輪山説話」の意味・わかりやすい解説

三輪山説話
みわやませつわ

奈良県桜井市の三輪山にまつわる神婚説話で、古く『古事記』にみえる。夜な夜な活玉依毘売(いくたまよりびめ)のもとに男が通い、ついに姫が身ごもる。男の素姓を怪しんだ両親は、麻糸を通した針を着物の裾(すそ)に刺させる。翌朝、糸をたどっていくと、それは三輪の神社まで続いており、男の正体が神であったと知る。『日本書紀』では、毎夜倭迹迹日百襲姫(やまとととひももそひめ)に通ってくる男に姿を見せよと求めると、翌日、櫛笥(くしげ)の中で蛇となっていた。本性を見られた男は三輪山に登るという話が箸墓(はしはか)伝説と結合してみえている。類話は昔話の「蛇聟入(へびむこいり)」苧環(おだまき)型として各地に伝承されていて、書承と口承の影響関係を探る手掛りを与えている。昔話では、糸は淵(ふち)や洞穴に続いている例が多く、蛇の子を宿した娘は、3月3日の桃酒または五月節供の菖蒲(しょうぶ)酒を飲んで難を逃れる。また『肥前国風土記(ふどき)』に、弟日姫子(おとひひめこ)の話として同類の説話がみられ、記紀伝承から昔話への過渡的形態をうかがわせるが、これらを総称して三輪山説話という。

野村純一

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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