精選版 日本国語大辞典「苧環」の解説
お‐だまき を‥【苧環】
〘名〙
① 糸によった麻を、中を空虚にし、丸く巻きつけたもの。おだま。
※古今(905‐914)雑上・八八八「いにしへのしづのをだまきいやしきもよきもさかりはありし物也〈よみ人しらず〉」
② 枝、葉のない枯木。一説に「ほこすぎ」をおだまきの形に見立てていう語。
※狭衣物語(1069‐77頃か)三「谷深くたつをだまきは我なれや、思ふ心の朽ちてやみぬる」
③ 蒸し菓子の一種。中に餡(あん)を包んだ求肥(ぎゅうひ)の表面に、ソバ粉で数多くの線を付けて、蒸したもの。
※人情本・春色淀の曙(19C中)二「上菓子ならば煉羊羹(ねりやうかん)、〈略〉有平(あるへい)苧環(ヲダマキ)都鳥」
④ 「おだまきむし(苧環蒸)」の略。
※精進献立集(1819)三九番「だい引 やうかんしたて おだまき わかめ、おだまきだいびきやにあり」
⑤ 紋所の名。わくに糸をうちがえに巻いた図形。
⑥ 貝「いとかけがい(糸掛貝)」の異名。
⑦ キンポウゲ科の多年草。古くから観賞用に栽培され、野生のものは知られていない。全体に粉白緑色を帯び、茎は直立して高さ二〇~四〇センチメートルになり、なめらか。葉は、長い柄のある掌状の三小葉に分かれて、互生する。初夏、枝の先端に碧紫色あるいは白色の花をつけ、下向きに咲く。いとくり。いとくりそう。むらさきおだまき。
▼おだまきの花《季・春》 〔和漢三才図会(1712)〕
※竹の里歌(1904)〈正岡子規〉明治三三年「鳥籠のかたへに置ける鉢に咲く薄紫のをだまきの花」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報