三輪(読み)さんりん

精選版 日本国語大辞典 「三輪」の意味・読み・例文・類語

さん‐りん【三輪】

〘名〙
① 三つの輪。
② 仏語。
(イ) この世界の地下にあって、世界をささえているという三つの輪。すなわち、最下に風輪、風輪の上に水輪、水輪の上に金輪があるとする。
(ロ) この世の流転輪廻のもとを無常・不浄・苦の三つに求めた無常輪・不浄輪・苦輪の三つ。〔存覚法語(1356)〕
(ハ) 仏の教化のはたらきを、身・口・意の三業(ごう)の上でとらえ、転輪聖王の輪宝にたとえたもの。神通輪・教誡輪・記心輪の三つ。
※本朝無題詩(1162‐64頃)二・傀儡子〈藤原実光〉「羈遊殆忘三輪業、世事不営万里躬」
(ニ) 仏の説法に三法輪の差があるとするもの。最初の初転法輪と、空を説いた照法輪と、究竟の不空を説いた持法輪の三つ。
(ホ) 布施における施者と受者と施物の三つ。この三つに空を観じて執着しないことを三輪清浄という。〔塩山和泥合水集(1386)〕
淘宮術(とうきゅうじゅつ)で、受胎年月日(誕生日の二六五日前)の干支。その年を大輪、月を中輪、日を小輪といい、あわせて三輪という。
※試みの岸(1969‐72)〈小川国夫〉黒馬に新しい日を「静岡へ下りる三輪があったもんで、乗せて行ってもらった」

みつ‐わ【三輪】

〘名〙
① 紋所の名。三つの円形をすこしずつ重ねて図案化したもの。
※雑俳・新編柳多留‐五(1841)「老込まぬ昔三輪に檜垣結ひ」

みわ【三輪】

姓氏の一つ。

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デジタル大辞泉 「三輪」の意味・読み・例文・類語

さん‐りん【三輪】

三つの輪。
三輪車」の略。「オート三輪
仏語。
㋐この世の地下にあって世界を支えているという金輪こんりん水輪風輪の三つ。
㋑仏の身・・意の三業さんごう転輪王輪宝にたとえていう。
淘宮術とうきゅうじゅつで、生まれた年月日の干支えと

みわ【三輪】

奈良県桜井市の地名。三輪山の西麓にあり、大神おおみわ神社鳥居前町。三輪素麺そうめんの産地。
謡曲。四番目物玄賓僧都げんぴんそうずが毎日庵を訪れる一人の女に衣を与えたが、三輪の神杉にその衣がかかっているというので行ってみると、三輪明神が現れて三輪の神話を語り、天の岩戸の神楽を舞う。

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改訂新版 世界大百科事典 「三輪」の意味・わかりやすい解説

三輪 (みわ)

能の曲名。四番目物。作者不明。シテは三輪明神の神霊。大和の三輪に住む玄賓僧都(げんぴんそうず)(ワキ)のもとに,1人の女(前ジテ)が来て衣を1枚恵んでほしいと願う。僧都が与えて住みかを聞くと,三輪山の杉のあたりと言って消え失せる。僧都が訪ねると神木の杉に与えた衣が掛かっていて,その裾に神託の和歌が託してあった。やがて巫女(みこ)の姿を借りた神霊(後ジテ)が烏帽子(えぼし),狩衣(かりぎぬ)の男の衣装で現れ,三輪明神にまつわる上古の伝説を物語る。それは,昔,大和に住むある女のもとに毎夜通って来る男がいた。女はその正体を知りたくて男の裾に糸をとじつけ,それを手繰りながら男の跡をつけたところ,この神木に糸が残っていたというのである(〈クセ〉)。神霊はさらに,天の岩戸隠れのときに初めて舞われたという神楽かぐら)を舞って見せ(〈神楽〉),三輪の神と伊勢の天照大神とは本体が同一なのだと教える。クセと神楽が中心。神道の清浄さを強調する一方,クセで恋愛伝説(三輪山伝説)を描き,独特な雰囲気がある。変型の演出の〈誓納(せいのう)〉〈白式(はくしき)〉〈神道〉〈神遊(かみあそび)〉などは,いずれも神楽を重くみたものである。人形浄瑠璃妹背山婦女庭訓(いもせやまおんなていきん)》の原拠。
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三輪 (みわ)

奈良県桜井市北部,三輪山のふもとの大神(おおみわ)神社(大和国一宮)などのある一帯の大字名。神体山として信仰された三輪山の山腹には奥津,中津,辺津の三つの磐座(いわくら)の巨石群も残る,初期大和政権とのかかわりの深い地域である。付近には古代海柘榴市(つばいち)があったと推定され,上ッ道と初瀬(はせ)川の交わる水陸交通の要地でもあった。のちには上街道に沿う商業地として,また大神神社の鳥居前町として発展し,旅籠屋(はたごや)や商家が軒を並べた。古くより三輪そうめんの産地としても知られ,《日本山海名物図会》は,他国産のそうめんにまさり,旅籠屋でも名物として旅人にもてなすと記す。
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三輪(福岡) (みわ)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三輪」の意味・わかりやすい解説

三輪
みわ

福岡県中部,筑前町南東部の旧町域。筑紫平野の北部にある。 1962年町制。 2005年夜須町と合体して筑前町となる。大部分三郡山地南西麓の扇状地で,米作のほかムギ,野菜,ブドウなどの栽培が行なわれる。古社の大己貴神社や国指定史跡で装飾古墳の仙道古墳がある。

三輪
みわ

奈良県奈良盆地南東部,桜井市北部の集落。三輪山の西麓に位置する。旧町名。大和一ノ宮の大神 (おおみわ) 神社 (境内は史跡) の鳥居前町,伊勢参詣の上街道の宿場町として発展。付近は古社寺が多く,古くからミカン,三輪そうめんの産地として有名。

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百科事典マイペディア 「三輪」の意味・わかりやすい解説

三輪【みわ】

奈良県桜井市の一地区。旧大三輪町の中心で,古くから大神(おおみわ)神社の鳥居前町,市場町,宿場町としてにぎわった。三輪山麓に古い山辺(やまのべ)の道が通じている。特産に三輪そうめんがある。

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