三重陽子(読み)サンジュウヨウシ

化学辞典 第2版 「三重陽子」の解説

三重陽子
サンジュウヨウシ
triton

トリトンともいう.トリチウム原子核 3H で,t,Tとも記す.1個の陽子と2個の中性子が結合したもので,結合エネルギーは8.482 MeV,最大エネルギー18 keV のβ線を放出し,半減期12.3 y で崩壊して 3He となる.核分裂エネルギーの次の時代のエネルギー源として考えられている核融合炉の反応においては,D-D反応に比べD-T反応は比較的低い温度で反応断面積が高く(たとえば,keV のけたから0.1 MeV のけたにわたってほぼ2けた高い),一反応当たりの発生エネルギーも約5倍なので,高温が得やすいことから,最初に実用化する核融合炉の燃料として,トリチウムから発生する三重陽子が使用される可能性は大きい.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「三重陽子」の意味・わかりやすい解説

三重陽子
さんじゅうようし
triton

三重水素原子核。原子番号1,質量数3,結合エネルギー 8.48MeV ,核スピン 1/2 ,半減期 12.3年で,β崩壊を行い,3He となる。その際の放出電子の最大エネルギーは 18keV で,普通のβ崩壊の際の放出エネルギーに比べて著しく低い。

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世界大百科事典(旧版)内の三重陽子の言及

【重水素】より

…またこれらに対し,ふつうの水素1Hを軽水素あるいはプロチウムprotiumとも呼ぶ。またDの原子核D(1個の陽子と1個の中性子から成る)を重陽子あるいはジュウテロンdeuteron,Tの原子核T(1個の陽子と2個の中性子から成る)を三重陽子あるいはトリトンtritonと呼び,Hすなわち陽子(プロトンproton)と区別する。 ジュウテリウムは,天然の水素や水素化合物中に水素の全量に対して0.015%含まれ,重水D2Oの電気分解でD2の気体として取り出される。…

【トリチウム】より

…三重水素ともいう。中性子2個,陽子1個からなる原子核(トリトンtritonまたは三重陽子という)をもつ,質量数3の水素の放射性同位体。化学記号は3HまたはT。…

【陽子】より

…陽子は水素原子の原子核であり,水素イオンとして陽子がつくられる。同位体として質量数が2の重陽子(デューテロン),質量数が3の三重陽子(トリトン)が存在する。 陽子の発見は,1886年ドイツのE.ゴルトシュタインが,陰極線の実験において陽極からも放射線が出ていることを見いだしたのに始まる。…

※「三重陽子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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