原子核がβ線すなわち電子または陽電子を放出して他の原子核に変化する現象。原子核の中の陽子(p)または中性子(n)が、陽電子(e+)または電子(e-)を放出して中性子または陽子に変化する現象である。その際、質量がほとんどゼロで電荷をもたないもう一つの粒子、中性微子(ニュートリノ)が放出される。β崩壊では、崩壊の前後で質量数は変化せず、陽子数を表す原子番号が一つ増加または減少する。β崩壊の過程を式で書くと、電子放出の場合はn→p+e-+で、陽電子放出の場合はp→n+e++νである。ここでν(ニュー)、
は中性微子とその反粒子を表している。原子の内殻を回っている電子を原子核がとらえる電子捕獲もβ崩壊の一種で、e-+p→n+νと表される。β崩壊をおこす相互作用はきわめて小さい結合定数をもつため、弱い相互作用といわれる。この相互作用のもう一つの特徴は、空間反転に対して不変でなく、パリティ保存則を破っていることである。
自由な中性子は半減期11.7分でβ崩壊をおこすが、自由な陽子のβ崩壊はエネルギー的に禁止される。人工的につくられた多くの原子核は、β崩壊を経由して安定な原子核へ変わっていく。β崩壊の例を質量数A=14の場合について に示した。β崩壊は、原子核のエネルギー準位の性質を調べるのに用いられ、また長寿命のものは放射性同位元素(ラジオ・アイソトープ)として多様に応用されている。
[池田清美]
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負の電子間放出を伴う原子核変換をβ崩壊という.このとき核内の中性子が1個陽子にかわる.正の電子を放出する過程は β+ 崩壊といい,陽子が1個中性子にかわる.また,陽子が中性子にかわる際に,核から陽電子を放出するかわりに,核外の軌道(おもにK殻)上にある負の電子を吸収する変換(K捕獲)もβ崩壊の一形式である.β崩壊に際しては,電子とともに質量も電荷ももたないニュートリノが放出され,放出電子と運動エネルギーを分かち合っている.これがβ線エネルギーが連続スペクトルをもつ理由である.K捕獲に際しては電子の放出は伴わないので,本来のエネルギーをもったニュートリノが放出されるものと考えられている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
…質量数Aを固定し,結合エネルギーを最大にする陽子数Zを求めると,が得られる。原子核は後に述べるβ崩壊によりAを変えずにZを変えうるから,上にもっとも近い整数値を陽子数とする原子核が安定ということになる。AとZとの上の関係を表す曲線はβ安定線と呼ばれ,天然に存在する安定な原子核,あるいは核反応によって作られる寿命の長い原子核はすべてこのβ安定線の近くに限られている。…
…フォトンはγで表す。
[β崩壊と中性微子]
β崩壊(β-崩壊)では原子核から電子がとび出し,核の電荷がeだけ増すが,質量はほとんど変わらない。すなわち一見,n―→p+e-のような反応であるが,n,p,e-はすべてスピン1/2をもつので,これでは角運動量の保存に反する。…
…原子核の放射性崩壊の一種で,原子核がK電子などの軌道電子を吸収し,よりエネルギー的に安定な核に変化する過程をいう。弱い相互作用による陽子pが電子e-を吸収して中性子nに変わり,同時に中性微子νeが放出される過程(p+e-―→n+νe)で,広い意味でのβ崩壊に含まれる。電子捕獲では質量数は変化せず,捕獲する電子の負電荷のため原子番号はZからZ-1となり,β+崩壊したのと同じ結果になる。…
…これを放射性崩壊という。崩壊の種類としてはα崩壊,β崩壊,γ崩壊が古くからよく知られている。α線の放出を伴うα崩壊では,原子番号が2,質量数が4だけ減少する。…
※「β崩壊」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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